Final-Drive
□BDショック! Final Romance 5
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緞帳を手で少し押しやり、開いた隙間から客席を見ると、そこにはまるで全盛期の週末のムーランルージュの
ショーの時の様な、いや、ソレ以上の盛況ぶりを見せており、立ち見まで出ていた。
よく見ると、立ち見の中には、レオを追っかけて来たであろうカメラやプレスがあった。
「マズイ‥マズイでしょ、コレは!私、オープニングの挨拶辞めたいカモ。」
「何言ってんですか、ボス!頼みますよ、もぉ。」
「だって‥このショー見て『コイツ等フザケてる!』とか言われたら、どーすんのよ?!」
「‥‥ボスが企画したんでしょ‥。」
「だから、マズイっつーの!あぁ!」
「ボスぅー‥‥。」
頭を抱えていたリカだったが、大きく深呼吸すると、震える両手をギュッと握った。
「分かったわよ。こーなりゃヤケクソよ!やってやろーじゃないの‥‥ッ!!」
そう日本語でヤケクソ気味に叫んだリカの声は、何故か会場内へ響き渡った。
「ぁ、ボス、それは‥マイクテスト中で、スイッチが入ってまして‥‥。」
スタッフが慌ててスイッチをオフにすると、会場からドッと笑い声が響いてきた。
「あーん‥死にたい;」
と、リカが嘆くと、スタッフは小さく肩をすくめる。
「幕が下りてて良かったですね‥。」
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開始時間を10分ほど過ぎた頃、ソレを示すブザー音が鳴り渡り、同時に照明がおとされる。
会場のざわめきも、徐々に引いてゆく。
幕の下りたままのステージ中央に眩しいスポットライトが当たると、小柄なのに存在感を感じさせる
それでいて人を魅了するオーラを纏ったリカが、艶やかに立っていた。
「本日は、お忙しいところを我が瀬名巳カンパニー衣料部門における、若手デザイナーショーに御出で頂き
ありがとうございます。本日のテーマは、いつの時も私達を悩ませる『男女』の物語。その中でも切ない
『別れた人との再会』です。その時みなさんは、幾つで、どんな服を身に纏い、どんな風に再会するのでしょうか?
季節は冬から春へ。移りゆく温度とともに、人の心もまた、移りゆきます。素敵な服を、そんなワンシーンに乗せ
今宵、皆様をステキな世界へとお連れ致します。」
美しいフランス語の発音と、リカの挨拶スピーチに、大きな拍手が寄せられる。
それに応える様にリカが笑顔で左手を上げると、別世界への幕が開いた。