Final-Drive
□BDショック! Final Romance 7
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「明日の日曜日、モナコのコースを見に行こうと思ってるんだけど。」
食事を終えシャワーから出て来た啓介に、既にシャワーを終えワインをあけていたリカが声をかけた。
「そうか。じゃ、俺も行くかな。」
「じゃ、レオに連絡を‥――」
「ぁ、オイ、ちょっと待てよ。」
受話器を持ち上げダイヤルしようとしたリカを啓介は、慌ててフックを押さえて止めた。
「どうしたの?」
「なぁ‥せっかく誰からも『キャーッ』とかって騒がれない外国へ来てんだし、1日くらい堂々と御天とサンの下を
2人で出かけたいよ、俺‥。」
「でも、『キャーッ』って言われるカモよ?啓介は。」
「言われねぇーよ。例え言われたとしても、日本のアーパーな女達よかマシだ!」
「ちょ‥アーパーって‥;」
言ってリカは、困った様に眉根を寄せる。
「そうかなぁ〜‥。じゃ、何かあった時の為に、2人で行くって事をレオに言ってた方が良いんじゃないの?」
啓介は『ウーン』と唸ると、渋々ダイヤルをプッシュする。
受話器の向こう側で、しつこく一緒に行くと言い張るレオを何とか説得すると啓介は、ホッとして受話器を置いた。
「OK取ったぞ!って、アレ?」
振り返った啓介の視線の先には、誰も座ってないダイニングテーブルと、空になったワインのボトルしか居なかった。
「リカぁ?」
覗いたベットルーム啓介は、大きなキングサイズのベットの真ん中に、小さく丸まって寝息をたてているリカを見つけた。
「あーあ‥無防備に幸せそーなカオして寝やがって‥反則だろ。」
啓介は『ちぇっ』と呟きながらも微笑むと、ベットサイドの明かりを少し落とし、再度隣のリビングに戻ってから
携帯を開き、慣れた番号を押す。少しすると相手が出た。
「兄貴?俺、啓介。ぇ?パリ・ラリーで大変な騒ぎ?へぇ、そうなんだ。つか、そんな事より‥俺、もうすぐ帰る。
帰ったら兄貴に1つ、頼みたい事あんだ。あぁ、帰ってから話す。それと俺、今、リカと一緒に居るから。
あぁ、元気だ。発作?1度だけ出たけど、今は全然大丈夫だ。じゃ、父さんと母さんによろしく。じゃ。」
静かに携帯を2つ折りした啓介は、煙草に火を点けゆっくりと紫煙を吐き出すと、壁に寄りかかり1人静かに目を閉じた。