Final-Drive
□BDショック! Final Romance 9
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みんなの視線に――
慌てて出て来たから、変な格好でもしているのか?と、リカは思わず自分の姿を鏡で見たりしたが
特段おかしな処は見当たらない。
気のせいかと、出来上がっている商品をチェックしていると、デザイナーの1人がリカに近付いて来た。
「あの‥ちょっと良いですか?」
「ん?なに?」
「ボスとケイスケって、どんな関係なんですか?」
いきなり言われリカは、口に含んでいたカフェオレを、もう少しで商品の上に吐き出すところだった。
「なッ‥何なのよ?!いきなり?!」
むせたカフェオレを、やっとの事で喉に流し込んだリカは、ヤレヤレと胸の上に手をあてる。
「だって‥昨夜はボスを当たり前みたいに連れて帰るし、今朝も送って来てるし。」
「たっ‥タマタマだよ。単なるレーシングチームのボスとドライバーの関係で‥ぁ、それに、私たち従兄妹だから。」
「従兄妹‥?そうなんですか。随分と親密な従兄妹なんですね?てっきりボスを捨てた男が、戻って来たのかと思いましたよ。」
――ギクッ
としたリカだったが、それ以上追求する事なく去ってゆくデザイナーの後姿を見送ると、気を取り直し再度、チェックを始める。
商品のチェックが終わると、店の方へ回り、陳列やディスプレイを鋭く見つめた。
幾つかのダメ出しはあったものの、この調子なら明日から何とか自分達で切り盛りしてゆけるだろう。
リカは、これだけは絶対という『絶対訓』を記した物をプリントアウトすると、皆の目がゆく、あらゆる所へ貼り付けた。
ビルの窓から外を眺めると、いつの間に湧いたのか、昨日と同じかやや多目の人々が並んでいるのが見えた。
しかし、よくよく見ると、同じ業界の人間であろう人物の姿もチラホラ見える。
「ふぅ〜ん‥。無視出来なくなったってワケかぁ〜‥。ッしゃー!店、開けるぞ――!!」
ガッツポーズ姿で大声を張り上げるリカを、スタッフは唖然と見つめるが、各自持ち場につくと
ボンジュールの声と笑顔と共に、店のドアが開かれた。
「あッ‥!」
リピーターで来た客から、驚きの声が上がる。
それもそのはず。
昨日は間に合わせで作っていた店内が完成し、ガラリと様変わりしていたのだ。
1つ1つを人の手で作られたソレ等は、数こそ充分にないものの、手にした瞬間から良さが伝わるのか
訪れるお客様の信頼と満足感は、得られている様に見えた。
店も生産ラインも滞りなく流れているのを確認したリカは、自分のオフィスに戻り
今後1ヶ月の計画書作成に取り掛かった――のだが、ハッと我に返った彼女は受話器を手に、押し慣れたナンバーをプッシュした。
2009 05 26