歌のプリンス
□不器用な甘え
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暖かい春の日差しがマサトの顔に降りかかる。
ココは学園の裏庭、高い建物も無く、本を読むにはベストスポットなのだ。
「ねぇ、もし好きな人が出来たら、どんな風に甘える?」
学生だろう、女の子二人が近くのベンチに座って、お弁当を食べている。聞き耳を立てるのはあまり良くないと分かっているものの、とても気になる内容だ。
「恋愛禁止でしょ?そんな事考えたこともないわ?」
相手の女の子は真面目な子のようだ。
「いいじゃない!想像ぐらいしても大丈夫よ!で?どうなの?」
「。。。。。そうね、他の人と話してる時に、こっそり、私と手を繋いでくれるとか?」
少し困ったような声で答える。
「あああーー!もう、全然分かってない!というか、繋いでくれるじゃなくて、繋ぎに行くのよ!」
突然熱弁を始めた一人目の女の子、声がかなり大きい。
「じゃあ、オレと繋ぐか?」
「「え?」」
二人の声がハモる。
「お前ら、そんな、大声で何の話してるんだ?」
眉間をピクピクして怒っている日向先生が二人の前に立っている。
「先生!あ、あの。。。」
マサトは二人に同情しながらも、頭の中では自分の思い人の事考えていた。
「マサー!どこに行ってたの?」
音也が教室に入ってくるマサトに声をかける。
「ああ、裏庭で本を読んでいた、今日は良い天気だったからな」
マサトは自分の席に着き、持っていた本を机の中にしまい代わりに課題を出しやり始めた。
「音也!」
翔の少し高い声が教室に響く。
「あ!翔!どうしたの?レンも、二人一緒に来るなんて珍しいね」
音也は二人が来てくれてよほど嬉しかったのか席から立ち上がった。
マサトの肩がビクッと跳ねる。それに気づいたのは教室に入ってからずっとマサトを見てるレンだけだった。
「まぁな、こっちに来る途中レンに会って、同じ行き先だったから、一緒に来たんだ」
「そうかい?翔が迷子になって泣いてたから連れて来てあげたはずなんだけど」
レンはクスクス笑いながら音也の前の席に馬乗りになりながら話す。
「泣いてねーし!迷子にもなってねー!マサト!レンの言うこと信じんなよ!音也も!」
必死に弁解しているようだが、音也はすでにレンの言ったことがつぼにはまったようで、お腹を押さえながら、大爆笑していた。
「おい!音也!」
翔はフルフルと振るえながら、怒りを堪えてる。
(つ、つ、繋いだほうがいいのだろうか)
ペンが止まっているのにも関わらず、課題に顔を埋めながら、必死にさっき、女の子達の話を実践しよかしまいか、悩んでいた。
学園に内緒でレンと付き合い始めたはいいが、未だに、恋人らしいことをした事がない。レンは毎日飽きもせずに自分に「好きだよ」と言って来るのだが昨日、部屋でレンが。。。。
「マサト。。。オレと無理に付き合う必要は無いんだよ?」
マサトの頭を撫でながら、突然、何の前触れも無く言い出したのだ。びっくりして、顔を上げると、いつも通りマサトにだけ向ける笑顔を向けてきた。
その時はなんと答えればいいか分からず黙ってしまったのだ。自分はレンが、、、好きだ。当たり前だ、さもなくば、ココまでしない。大好きだ、、、こんな気持ちも、こんなに思った人も初めてで、どうすればいいか分からないのだ。
レンが立ち上がった。
「翔送ったし、オレ教室に戻るよ」
「えー!もう少し、いろよ!レン!放課後、お前、歌の練習でサッカーできねぇーじゃん」
翔がレンを引き留める。
(は、はやくしないと、、間に合わない)
「でも、まぁ、オレがいたら困る子がいるから」
苦笑いするレン。
「えー?誰?レンがいたら困る子なんている?」
音也が不思議そうに言う。
レンは調度音也の横に立っていて、手が後ろに回されていた。
マサトは目だけで位置を確認しながら、左手をレンの右手に伸ばす。
「いるよー、さすがのオレも、誰もに好かれるほど、上手く出来てないからなー」
さっきよりも傷ついた笑顔。
「なぁ、レン。お前、どこか痛いのか?」
翔は心配そうにレンに聞く。
「え?」
「いや、なんか、すごく、なんか、我慢してるように見えるから」
翔が答える。
その瞬間、何か暖かい物が自分の右手を恥ずかしそうに、握った。
レンは一瞬驚いたように、目が開いたが、次の瞬間また、優しいいつもの笑顔に戻った。
「心配してくれて、ありがとう。もう、大丈夫だよ」
レンはその暖かい手を優しくでも力強く握り返した。見なくても分かる、この握り方、この体温、小さい頃から変わらない。
レンはまた、音也と翔と話を続けた。
唯一、レンの後ろに座ってるマサトの心臓は信じられなく激しく飛び跳ね、リンゴのように真っ赤な顔を課題の本に埋めていた。
久しぶりに書きます!!なんかいろいろぐだぐだです!次こそは、もっと、激しい二人を書きたいです。