歌のプリンス
□大丈夫だから
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オレはレンの迷惑にはなってないだろうか……
今日は日曜日なので学校から外出許可を得て大きなデパートに来ている。最近なかなか思う通りの曲が書けず気晴らしに買い物という訳だ。オレには似合わない行動だと知っている。レンがこういう事好きだと、翔に聞いたので少しでも、レンの話について行けるようにと取った行動である。
春が来てとても良い日差しが降りかかる。
デパートに入ると沢山のカップルや家族、学生がごった返していた。
三階はメンズ服が売ってあり、滅多に来ないのでドキドキしながらも服を見始めた。
「このアクセサリーいいんじゃない?」
「おー、お前よく俺の好み分かったな〜」
「当たり前じゃん!彼女なんだから!」
スタイルの良いカップルがマサトの近くでアクセサリーを選んでいた。男の方がヨシヨシと女の頭を優しく撫でている。
恐らく本人は気づいていないがマサトはそんな二人の様子を羨ましそうに見ていた。マサとはキュウっと服の裾を握る。
(レンは……レンはどういうのが好きなのだろうか…)
自分はレンと長い間一緒にいるがどういうのが好きだとか、レンは何も言ってくれないのだ。
(オ、オレは、レンの、か、か、彼氏だからな、あいつの好きな物くらい……)
周りを見渡すと数え切れない程の服とズボンとアクセサリーと、、、この中からレンの好きな物を選ぶ……
(オレだって、オレだって…)
目頭が熱くなるのが分かる、手元にあるTーシャツがぼやけて見える。
自分はレンの好きな物が全然分からない。全然。
「マサ!昨日デパートに行ったんだって翔に聞いたんだけど、何か好きな物買えた?」
次の日、朝、教室に入ると早速音也に声をかけられた。
「あぁ、まぁな、墨とかを買った。」
上の空で答えるマサト。
音也はあまり気にするそぶりも見せずに、自分の話を話し始めた。
今日は入学以来最悪な日だった。先生に名前を呼ばれているのにも関わらず、ぼーっとしてしまい、珍しく怒られた。食事の時も、食べ物が喉に入らず、全て音也に譲ってしまった。
部屋に戻ると灯りはまだ付いていなかった。恐らくレンはまだ、歌の練習か何かしているのだろう。
灯りを付け着替えもせずに、畳の上に座り込む。
(レンは……どういうものがタイプなのだろう)
大人っぽいものだろうか、それとも、少し派手なものだろうか……
また目頭が熱くなる。レンは本当にこんなオレのどこが気に入ってくれたのだろうか。好みの物も知らないような奴と一緒にいて、楽しい訳がない。オレがしつこいから、仕方なく一緒に居てくれてるのかも知れない。あいつの周りには可愛い女の子が山程居る、オレなんかとわざわざ一緒にいる必要なんてない。
溢れ出てくる涙。
(すまない、レン……本当に、すまない、オレなんかがお前を好きになってしまって)