歌のプリンス
□ごめんなさい
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最近オレには悩みが出来た。
原因はマサトだ。
オレを悩ましていいのはマサトだけだからね。
「聖川くん〜!この課題なんだけどね」
「あぁ、昨日話した通りにしてくれれば」
ムカつくとはこういう時に使う言葉なんだろうね。
Aクラスは三日前から作詞作曲の課題が出た。くじ引きでマサトと友千香が一組になった。それは仕方ないと思っている。しかし、恋人が他の人に取られるのは面白くない。
「レン?」
寮に戻ったらマサトは必ず「レン」と呼んでくれる。みんなの前ではまだ「神宮寺」なんだけどね。
「、、、、。」
「どうしたんだ?レン?」
マサトが慌ててレンのそばに駆け寄る。
レンはソファの上でつまらなそうな顔をして雑誌を読んでいる。
「別に」
マサトはレンの横に座り落ち着かないのかわたわたしている。
「レン?」
「、、、、ちょっと一人にしてくれるかい?」
マサトに八つ当たりしても、どうにかなる問題ではないがこのむしゃくしゃが収まらないんだ。
「、、、、分かった。その、すまない、じゃまをして」
マサトは特に何も言わず、自分のスペースに戻り服を着替え始めた。
そうなのだ、マサトはここ最近レンの様子がおかしいことに気付いていた。今日になって我慢できなくなって、聞いてみたが反対に気分を悪くしてしまったようだ。
(オレは、また何かレンにいやな思いをさせてしまう事をしたのだろうか)
ボーッとその事ばかり考えている為、なにかをしている時手が止まってしまう事がしばしばあった。
(レンの邪魔にはなりたくない)
翌日
「おはよー!聖川君、歌詞考えてきたよー!色々思い付いたんだ。一緒に選ぼう!」
「おはよう、渋谷。すまないな、苦労をかける。そうだな、一緒に選ぶか」
二人は自習の時間を使って第三音楽室で課題を始めた。
「オイ、レン、、?こえぇぞ顔」
翔は恐る恐るレンに話しかける。
「、、、、そうかい?おチビちゃんの気のせいじゃないのかな?オレはいつも通りだけど」
二人は今第三音楽室の前にいる。次の時間二人はこの教室を使う為早めに来たのだ。
「、、、、。」
レンは二人の仲良くしている姿を見て言葉も見つからないほどイライラしていた。まさか、ここまで独占欲が強い人間だったとは自分でも驚くほどだ。
「レン?」
翔はどうにかしようとレンを呼んだが完璧に無視される。
「今日はここまでにするか、だいぶ進んだな」
マサトは嬉しそうにもうすぐ完成する二人の曲をながめる。
「そうだね。完成が楽しみ!これも全部聖川君のお陰だよ」
友千香も嬉しそうに笑う。
「そんな事ない。二人でがんばったんだ、二人のお陰だ」
「あははっ、そうだね、二人のお陰だね」
二人はドアの方へ向かう。
友千香がドアを開ける。
「じゃあ、また「聖川」」
友千香の声が遮られる。
「、、、、レン!!」
反射的に「レン」と呼んでしまった。
「あ、ちがう、その、神宮寺、次使うのか?すまない、待たせてしまって」
レンが顔をしかめる。
「神宮寺君に来栖君、どうしたの?」
友千香もなぜか驚いている。
「いや、それがな、、、」
翔が困った顔をしている。どう説明すればいいのか。
「もう、いい」
レンはそのまま、翔の腕を引っ張って行ってしまった。
「あ、神宮寺」
小さい声でレンを呼び止めるマサト。
「どうしたの?神宮寺君、なんか凄く怒ってたよね?」
友千香は不思議そうな顔で首を傾ける。
「、、、、そうだな」
もしかしたら、レンは翔との時間をつぶされて怒っているのかもしれない。また、迷惑をかけてしまった。
「聖川君!?」
マサトの目から大粒の涙が次から次へと流れ出る。
「うっ、うっ、すまない、大丈夫だ」
マサトまま走って行ってしまった。
「いったいどういうこと?」
友千香ははーっとため息を吐いた。