歌のプリンス
□名探偵
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人にはそれぞれ得意な事があると思う。
オレにもある、ちょっと特殊だが、、、、。
「レンいないな、、、どこ行ったんだろ?」
音也がはぁーとため息を吐いて教室に入ってくる。
「一十木?神宮寺を探しているのか?」
マサトが本から目をはなして音也に話し掛ける。
「あ、うん。昨日一緒に創った曲をもう一度練習したくて」
「曲?」
「うん。林檎先生が、曲のタイプが違うオレとレンが創った曲を聴いて見たいって言うから、二人で創ったんだ」
音也が困ったという顔で席に着く。
「そうか、オレで良ければ探すのを手伝うが?」
「え!!いいの?じゃあ、お言葉に甘えて。Sクラスにも、寮にも居なかったから、Aクラスかなと思って来たんだけど、はぁー、見つからないねぇ〜」
音也は本当に困っているらしく、ガバーと机に倒れる。
「そうか、お前が最後にあいつに会ったのはいつだ?」
マサトは本を閉じ、身体を音也の方に向ける。
「んーとね、確か、、、お昼は一緒だった、うん」
音也が眉間にシワを寄せ必死に思い出そうとしている。
「そうだな」
お昼はいつもの六人と春歌を加えた七人で食べたのだ。
「それで、、、Aクラスは午後自習でSクラスは日向先生の授業の後に自習なんだよね」
「………そうなのか」
ふむと名探偵のように頷き腕を組むマサト。
「オレはその頃を見計らってSクラスに行ったの、その時は居たんだよ、それで少し話をして、七海に呼ばれて……そうだ、六時間目に会ったのが最後だよ」
音也はやっと思い出したと言うようにマサトを見る。
「その時の神宮寺はどんなだった?」
マサトは音也の目線を受け止め聞く。
「どんな?少し不機嫌だったかな、トキヤがレンは好き嫌いが多過ぎるとか何とか言ってたんだ」
「………恐らく、神宮寺は今……屋上に居る」
「ヘ?」
音也は驚いて変な声を出してしまった。
「だから、神宮寺は今屋上に居るはずだ」
「どうして?どうしてそう思うの?」
ただ、話をしているだけなのにレンの場所が分かるなんて。
「いや、機嫌がいい時も悪い時もあいつは高い所に居るのが好きなんだ」
マサトは音也の目を真っ直ぐ見ながら答える。
「そうなの?」
「あぁ、小さい頃よく木に登らされた」
遠い目をするマサト。
「そっそうなんだ」
その時、トキヤが来た。
「音也、マサト、レンを見ませんでしたか?日向先生が探していて」
「はい!はい!屋上だよ!」
勢い良く手を上げ立ち上がる音也。
「屋上?さっき行きましたけど」
トキヤが音也の迫力に押されながらも答える。
「………マサト?」
音也がぐるっと振り返る。
マサトが優しく笑った。
「じゃあ、もうすぐこの教室に来る。一ノ瀬、ここで待って居た方が早く見つかるぞ」
二人は不思議そうに顔を合わせる。
「…………聖川?」
トキヤと音也がバッとドアの方を向く。
「……本当だ。」
「……すごいですね、マサト」
二人は口々に感嘆の言葉を漏らす。
「ん?どうしたんだい?」
レンはまるで珍しい生き物を見るかの様にトキヤと音也を見る。
「いや、それがですね「一ノ瀬」」
トキヤの話を遮るマサト。
トキヤがマサトを見るとマサトは軽く首を左右に振る。
それを見たトキヤは苦笑する。
「イッチー?」
レンがトキヤの顔を覗き込む。
「あー!!レン、そんな事より曲の練習!!しよって約束したじゃん!!」
音也がプクーとほっぺを膨らます。
「あぁ、そうだったね」
レンはふーっと息を吐き前髪を掻き上げる。
「約束は守らないとな」
マサトがレンに向けて話す。
「うん、そうだね、すっかり忘れてたよ」
「忘れて……くっ」
と音也がグラグラと足から崩れ四つん這いになる。
「いえ、こっちの方が先です。レン、日向先生があなたを探していました」
「え?本当かい?困ったなぁ」
わざとらしく顔をしかめるレン。
「モテる男はつらいよ」
レンは首を左右に振る。
「あっちこっち約束して、あっちこっち悪さをするからだろう」
マサトが呆れたように言う。
「フフッそうかもね」
その後音也との約束が引き延ばされ曲提出日ギリギリになって完成する羽目になった。
誰の噂かこの事件以来、レンを探す人はまず一直線にマサトの所に行くようになった、そしたら探す手間も省けあっという間に見つけられるからだ。
日向先生もよくマサトを探しに来るようになった、そのおかげでレンが少し真面目になった事は言うまでもない。
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レン様の事すぐ見つけられるマサさん、すごく好きです。