歌のプリンス
□眠るのはあなたのそばで
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今日から数日の間SクラスとAクラスは合同授業を受ける。何故なら日向先生がドラマを受けた為授業をする時間が無くなったのだ。
自然豊かな早乙女学園には大きな草原やら湖やら何でもある。そこでこの機会を使って自然の中で曲を作ろうという学園長の提案で2クラスの生徒はバラバラに散らばり、それぞれの作業に取り掛かり始めた。
ST★RISHの6人と春歌の7人は大きな草原をテーマに曲を作り始めた。
「あーーーーー!草原で曲なんか作れるかーーー!」
翔がバタンと後ろに倒れる。
「そうですね、お草さんではどんな曲がいいのか」
ナツキも苦笑いをする。
「七海、何かいい曲書けた?」
音也がさり気なく春歌に聞く。
「はい、何曲か、でも、どれもしっくり来ません」
「やはり作曲家目指している七海さんは凄いですね」
トキヤが言う。
「いえ、そんな事無いです」
春歌は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「ところでこの2人は一体どういう事なんだ?」
翔が正面に座っている2人を見て言う。
マサトは真面目に曲を作っているように見えるがレンはマサトに寄り掛かりながら眠っていた。
「珍しいですね、聖川さんが怒らないなんて」
春歌が呟く。
「そうだね」
と音也。
「マサト」
翔がマサトに話しかける。
「………あぁ、なんだ?」
マサトが一点歩遅れて返事をする。
「レン、どうしたんだ?」
「レン?あ、オレもよく分からん。朝から眠い、眠いと言うんだ」
片手を伸ばしハチミツ色の髪の毛を撫でる。
「眠い?熱でもあるのかな?」
音也が心配そうに聞く。
「それは無い、朝計ったのだがいつも通りだった」
「そうですか…寝不足なのかも知れませんね」
トキヤも話に加わる。
「あぁ、多分」
「んっ」
レンが小さく唸り声を上げる。
「どうした、神宮寺」
マサトが身体を少しずらし、レンがずれ落ちない程度に落ち着く。
「んっ、んー、いや」
目を開けるのも億劫らしく目を閉じたまま話をするレン。
「ねむい」
「そうか、寝ろ」
マサトはポンポンとレンのわき腹を優しく叩く。
「…………、すぅ」
レンはまたあっという間に眠りに着いた。
「はえーーー」
翔が腑抜けた声を出す。
「すごいですね」
トキヤも目を見開く。
「え?どういう事ですか?」
春歌が何事かと腰を上げ聞く。
「あ、いや、レンってさ、教室で寝てる時人に触れられる寸前で起きちゃうんだ」
翔が春歌に説明する。
「声を掛けるだけで直ぐに起きます。眠りがすごく浅いので本当に寝てるか心配になる位で」
トキヤが付け加える。
「……そうなんですか、でも、今の神宮寺さんは…」
そう、レンはぐっすりと眠っている。いつの間にか体勢を変えたのかマサトの腕の中にスッポリと収まりくーと寝ている。
マサトは当たり前という顔で作曲する事に頭を捻らせている。
「なんか、マサトくんだけ特別って感じですね」
ナツキが微笑ましく2人を眺める。
「そういう事になるな」
翔も二人の様子を眺めながら、曲をどうにかしなくてはと顔をしかめた。