歌のプリンス
□大丈夫だから
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「...ただいま」
レンはさっきまで日向先生に捕まっていたのだ。この前の課題がダメだとか何とか。
「おっおかえり」
慌てて出迎えに来るマサト。
出迎えに来てくれるのは凄く嬉しいのだが、毎回毎回、ドアの所まで来なくても……
「マサト、遅くなってごめん」
マサトにしか向けない笑顔で笑った。
「いや、全然、ヘーキだ。お前の事が終わって無いなら、終わってからでも、大丈夫だ。」
マサトはレンの前でオドオドしながら喋る。
ここ最近、マサトの様子がおかしい。凄く遠慮ばかりしているのだ。よそよそしくて、全く甘えて来ないし、我が儘も言わない。
「マサト……」
そっと手を伸ばし、マサトの頭に乗せる。
マサトは微動だにせず、ジッと俯きながら黙っている。
「最近、何かあった?」
覗き込む様に身を屈める。
ビクッと身体跳ねたが返ってくる返事が、又、よそよそしい。
「何も無い。いつも通りだ。レ、レンは大丈夫か?」
(オレが聞いてるんだけどなぁ)
苦笑いしながら、手を降ろす。
「オレもいつも通りだよ。」
「そっそうか、それなら良かった」
心から安堵した顔をしている。
「ねぇ、」
「うわぁ!」
本当に驚いたのだろう、音也は、掬っていた、カレーを落としてしまった。
「カレーが、、、」
うっうっと落ちたカレーを拭き始めた。
「ごめん、ごめん」
誠意の籠らない声で謝るレン。
音也の向かいの席に座る。
「神宮寺さん、珍しいですね!食堂でお食事ですか?」
ニコニコと笑う春歌。
「やぁ、子羊ちゃん、いや、ご飯はもう食べたよ。ちょっと聞きたいことが有るんだけど、良いかな?」
レンもニコニコ笑い返す。
「ええ!もちろんです!」
春歌は答える気満々で、食べかけのサンドイッチを皿に戻す。
「ふぅー、やっと拭き終わった。」
音也は座り直した。
「あのさ、聖川最近なんか変わった行動とかある?」
レンは音也の目を真っ直ぐに見ながら聞く。
「んー、マサの変わった行動ねぇー」
どうやら真面目に考えている様だ、眉間にシワを寄せている。
「最近の聖川さん、何か考えてる事が多いです。ずっと、ぼーっとしてて、上の空って感じです。そうですよね、一十木君?」
「そうだね、今日の朝もそうだったよ。話しかけても、「あぁ、そうだな」しか返ってこないし」
二人とも心配しているのだろう、表情が少し暗い。
「そっか、ありがとう」
レンはそのまま食堂から離れた。