歌のプリンス
□ガマンできない
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「悪い事だとは分かっていたのだが、その、我慢が出来なくて、、、」
マサトはゆっくりと体を起こし抱きしめていた服を弱弱しく差し出す。
レンの服だ。
この前雨が降ってしまった時、レディを濡らすわけにはいかないと春歌に貸していた服だ。春歌は平気だと言ったのだが、風邪を引かれては困るので使ってくれと言ったのだ。
なぜその服がマサトのところに?
「マサト?」
レンはその服を受け取り、マサトの綺麗な顎に指を添え、顔を上げさせた。とても申し訳なさそうな顔をしている。胸が締め付けられる。
「、、、すまない」
マサトはレンと目を合わせないようにさりげなく顔をずらす。
「どうしてなんだい?どうしてこの服がお前のところに?」
マサトはビクッと肩を揺らし、また下を向いてしまった。
「、、、、すまない」
「謝ってばかりじゃ分からないな」
レンは理由を聞こうとマサトに近づく。
「すまないと言っているだろう!!!」
マサトは涙で濡れた目でレンを睨み、音楽室から出て行ってしまった。
「、、、、。」
レンは手に持っている服をギュウっと握った。
「、、、えっと、お取り込み中悪いんだけど」
さっきからずっとドアの横に立っていた翔が我慢できずきに口を開いた。
「あぁ、おチビちゃん、知らせてくれてありがとう。」
お得意の笑顔を翔に向けた。
「いや、礼を言われるほどの事はしてねぇけど」
翔はしろどもどろに答える。
「そうだ、レディがどこに居るか知っているかい?」
レンは立ち上がり翔に聞く。
「わりぃ、それはわかんねぇ、音也に聞いてみたら分かるかも」
「ありがとう」
レンはさっきの感情の無い笑顔をもう一度翔に向け出て行った。
「レン、、、、こえぇ」
翔はそのまま放心したようにその場に立ち尽くした。