歌のプリンス

□ちょっとだけ
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「…………。」


無言が続く中マサトのイライラが上昇する。


一人畳の上に正座し心を落ち着かせようと習字をするもの納得のいくものが出来ずじまいに筆を下ろした。



チラッとレンを見ると真剣な顔で本を読んでいる。正に釘付け状態だ。



(………本がそんなに面白いのか)

きゅうっと口元を噛み締めるマサト。



内心構って欲しくてたまらないがそんな事言える訳がない。


(もう寝るか)


マサトは布団を敷いてモゾモゾと中に入る。


(邪魔する訳にもいかないしな)


口実を作って自分を納得させてウトウトし始めた頃



「………マサト」


レンの声で反射的にガバッと起きる。


「どうした?」

何事かとレンを見る。


レンは眠そうにこちらに近付く。


「一緒に寝よう」


レンがモゾモゾと布団の中に潜り込む。


流石に一人用の布団に183cmの男が入って来ると狭くなる。


「狭くないか?」

マサトは端へと身体を移動させる。布団のほとんどをレンに掛けてあげて自分は先っぽの方をお腹に掛けた。


「いや……んー、ねむい……」


マフッとマサトの胸に顔を埋めスンスンと匂いを嗅ぐ。


「そうか、ならば、寝ろ」

よしよしとレンの頭を優しく撫でる。


内心レンが自分の事を構ってくれて嬉しくて堪らないが顔に出さないように堪える。


「……マサト……」


「なんだ」


「マサト……」

「どうした」


マサトはレンの柔らかい蜂蜜色の髪に顔を埋める。


「マサト」


「だからなんだ」


不審に思ったマサトは顔を上げる。


「……マサ「レン」」


マサトがレンの身体から離れる。


「どうしたんだ」


レンの瞳は不安に揺れていた。


「いや、別に」


レンはマサトから目を逸らす。
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