*Novel*
□君に捧ぐ.
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俺たちが付き合い始めて、1ヵ月が経とうとしていた。
「よぉ、ルーシィ」
「おはよう、グレイ!」
ギルドでは、普通に、いつも通りに話している。
だけど。
「…なぁ、ルーシィ?聞いてたか?」
「な、ななな何///!?」
ちょっと苦笑。
(また、か)
こうやって二人だけで話すとき。
二人だけで帰るとき。
ましてや、ルーシィの部屋で二人きりの時なんて、目も合わせてくれない。
(俺は普通に振る舞ってるつもり、なんだけどな)
もう付き合って1ヶ月にもなるというのに、キスさえもしていない。
「な、ルーシィ、手」
「う、うん///」
手を繋げる様になっただけでもマシか。
“意外と”純情乙女な彼女には、キスなんてまだ先の話。
だから、彼女が慣れてくれるまで俺は待つ。
ゆっくりでいい。
そして、いつか―――。
ある日、俺は花屋の前を通りかかった。
(花…か)
彼女には、どんな花が似合うだろう。
明るい花。可愛い花。綺麗な花。
なんか、どれも少し違う。
ここにはない。
「んー…あ、」
両手に魔力を込めた。
彼女を想像して。時間を掛けて。
出来たのは、可憐で綺麗な氷の花。
それを持って、ギルドに向かった。
「…ルーシィ」
「あ、グレイ。どうしたの?」
いざ渡すとなると、恥ずかしくなってきた。何て言って渡そうか。
「…えーと。これ、やる」
「え!?あたしに…??」
「お前の為に造ったんだ」
「…あ、ありがとうっ///」
そう言って笑った彼女は、今までにないくらい輝いて見えた。
「…でもこれ、溶けて無くなっちゃわない?」
「簡単には溶けねぇよ。それに、無くなってもまた俺が造ってやる」
「うんっ」
これで、いい。
ゆっくり、ゆっくり。
距離を縮めていけばいい。
君が喜んでくれるなら、
いくらでも造ってあげる。
君に似た、綺麗な花を。