*Novel*
□たんぽぽ
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大事なモノほど、探しても探しても、
見つからない。
グレイの溶けない氷は、あの灰と化した町を覆い続けている。
そこに、春がやってきた。
あたしを遮っている壁の向こう側にたんぽぽが咲いている。
灰の町に、黄色が一輪。
淋しそうに、でも、しっかりとその存在を誇張していた。
あたしの立っているこちら側は、まだ冬みたいに寒いのに。
ゆらゆらと揺れているたんぽぽを見詰め笑みを溢す。
―こっちには、まだ春は来そうにないなぁ…
しばらくその光景を眺めていたけど、ギルドに帰ろうと踵をかえす。
ばいばい。
逢えたらきっと、こう言うわ。
「ばかね。」
貴方にも、あたしにも。
今さら、この気持ちに気付くなんて。
(また逢う日まで)