氷帝学園R組!

□act.??
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宍戸side








新入生の跡部景吾。
その彼の偉大なる宣告。


「俺様が王様だ!」


俺はその独裁政治を始める宣言に、俺は腹立ちを覚えた。

だから俺は彼に勝負をした。
Jr.選発にも名前は載ってなかったし、そこらの雑魚いクラブチームにでも所属してるやつだろう。
だから、その時は彼を完全に舐めていたんだ。
でも――。



「何だ、そんだけか? アーン?」



強かった。
強すぎた。
歯が立たなかった。
岳人と二人で、二対一だったのに、あっさりと負けてしまったのだ。
その後に行われた、忍足と跡部の勝負を見て、驚きを隠せなかった。
――俺はこんなにも弱いのか。
それが自分の体に叩きつけられる様な感じがして、こんな自分に嫌気が差した。






跡部が小学生と共に帰って行く背中を俺はジッと眺めた。
彼は言った。「全国を目指す」ではなく、「全国を取る」と。
まるで欲しいものを見つけたかのような無邪気な顔で。


――なら俺は、お前を頂点(そこ)から奪ってやる。


そう覚悟を決めたその時だった。



「――あの、」


自信のない弱々しい声。
後ろを振り向くと、先程帰って行った筈の跡部景吾の姿が。


「――!?」


思わす変な声を出してしまった。
だが、よくよく見てみると、彼とは所々違う。
声の高さ。髪の長さ。瞳の色。そして――雰囲気。
彼の纏う周りの雰囲気は、跡部景吾とは違う、弱々しい雰囲気。
そして、実際は大丈夫だが、どこか息詰まるような、息苦しい雰囲気。


「テニス部の顧問の方は、どちらにいらっしゃいますか?」


消えそうな瞳が俺を見る。
どこか弱々しいそれは、まるで吸いよせられるかのような感じがして、口が動かせない。
そんな俺を様子を見て、ジローが俺の代わりに話してくれた。


「顧問の先生なら多分職員室じゃねーの? ねー、元部長さん」
「あ......ああ、榊監督なら職員室か音楽室にいるぞ」


そう言うと、彼はうーんと考えてその後に有難うございます、と言ってお辞儀をした。
跡部景吾だったら絶対にあり得ない光景、だが跡部景吾によく似た彼は、すんなりと頭を下げた。
そんな姿を見て、岳人はクスリと笑ったが、俺はそんなこともなく、ただ彼を呆然と見つめる。


「紹介、遅れました。俺は跡部景司と申します。景吾さんの双子の弟と値する者です。明日から共にテニス部で練習させて頂きますので、どうぞ、宜しくお願い致します。」


そう丁重にお辞儀をして、彼は校舎の方へと向かって行った。
俺はそんな彼の姿を、無意識に睨んでいたらしい。岳人に「アイツと何かあったのか?」と心配されてしまった。
自分でも分からなかった。こんなにも跡部景司を嫌っている理由が。
兄の跡部景吾の方が性格は悪いのに、なぜ弟の方が嫌っているのか。
この時はまだ、分からなかった。
――まぁ、分かる日には、彼はもうそこにはいないのだが。



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