氷帝学園R組!

□act.02
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絶望の入学式が終わった次の日、私の絶望の日々は変わらない。
榎本先生に、昨日か今日のうちに入部届けを出して置いた方が先生として楽、と聞いたので、私は迷いに迷って、演劇部に入部した。
演技をするのは昔から得意だし、何せ楽だからそこにしたのである。
ちなみに榎本先生は料理部らしい。包丁を持ちながら寝ているイメージがよく似合う。
……いや、似合ってはいけないのだが。

今日も私は憂鬱な気分でドアを開けた。
昨日よりは重くない雰囲気の教室。すでに香澄ちゃんと成瀬君は仲良く話している。
高下君はまだ来ていないらしく、席には何もない。
後ろの席では黒岩さんときもっぺと書かれた可哀想な人形が乱闘している。黒岩さん何者。
その他の人は相変わらず座ったままで、跡部君は予習をしながら、狩町さんは顔をうずめた状態で過ごしていた。
ちなみに球磨園君は休みらしい。昨日彼本人が言っていたから。
一人でちょこんと座っているのもアレなので、誰かと関わろうと後ろを振り向くと、ちょうど顔を上げた狩町さんと目があった。


「あ……お、おはよう」
「…………。」


狩町さんは相変わらず私を睨みつけ、そのまま顔をうずめた。
だが――私はその睨みつける目を見て、ある違和感を覚えてしまった。
そして、この日から私は、狩町朱理のことが気になり始めたのであった。




「……で、コレがxになるの、おーけー?」


グダグダで始まりグダグダで終わるだろう榎本先生の授業は、 グダグダだったがかなり分かりやすかった。
母親が中学のなったら数学が難しくなるとか言っていたけれど、榎本先生の説明で難しいところは殆ど解けた。
だが欠点と言ったら無駄話と生徒いじりとペースが早いこと。
皆が問題を解いている時に自分の昔話語り出したり、跡部君とかいじったりする。
ペースが早いのは皆の理解力が異常なほどいいからだ。
よく分からないところも先生の適当な説明で大体の子が理解する。
私と高下君は二回目のちゃんとした説明で解ける。
言っておくが、私は馬鹿ではない。高下君は分からないが。
私は小学校の頃は必ずしも80点以上は取っていた(自分で言うのもなんだが)いい子の部類に入っていた。
だから、私は決して馬鹿ではない。私と高下君以外の 子が賢すぎるだけだ。

何だかんだ言って楽しい授業だが、それに参加しないのが一名いた。
それは、狩町朱理さんだ。
彼女はうつ伏せのままで、授業に参加していなかった。
それを無視して授業をしている榎本先生が、気に入らなかった。

昼食の時間。R組の子は学食で食べる子が殆どであることが今日分かった。
授業中に自慢げに話していた弁当を持ち、ニコニコ笑いながら通る榎本先生は、当然人に見られていおり、同僚の先生方に笑われていた。勿論、生徒達も。
だが、その中でもまた一人だ外れているのが一人。狩町さんである。
彼女はうつ伏せのままで、私が行った時も行った後もそのままだった。
もしかしたら私達が学食に行っている間に何処かに行っているかもしれない が、確信がないので、明日付近に見てみようと思う。

そして部活の時間。
私は演劇部で自己紹介をした後、他の人の自己紹介をしながら窓の外を見てみると、狩町さんがいた。
まだ、部活を決める時間あるし、その行動は別に普通だが、私が目に入ったのは、彼女の表情だ。
どこか恐怖心や居心地の悪い、と思っているかの様な表情をして、早歩きで歩いていた。
そして、その時の彼女の表情に、目つきが悪い、と言うものはなかった。

今日一日、彼女を観察して分かったことがあった。
彼女は何かを隠すため、人と関わるのをやめている。
それ以前に、彼女は人と関わることを恐れている。
それは、怯えている、とは違い、苦しい、とかそこらへんの恐怖心だ。

将来的にも、人 と関わるのは必要だ。
例え、R組の生徒だとしても。
例え、私と同じ《能力》を持っていたとしても。
人と関わなければ、何も始まらない。
なら私が――。

その時私は、R組と関わらないと言う肩書きなどとっくになくなっていた。
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