悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜

□〜第二章〜
1ページ/11ページ

〜翔SIDE〜
−学ノ国 城下街−

翔「さあさあ、よってらっしゃい見てらっしゃい!」

俺は、たくさんの民衆の前で杖を操りながら叫んでいた。

翔「見たいやつだけよっといで!もうすぐ始まるよ!」

子1「翔兄ちゃーん、早く始めてよー!」

子2「またあの魔導見せてー!」

翔「はいはい!それじゃあ始まるよ!」

俺は、杖を振りかざした。

翔「最初の演目は、水芝居だ!」

俺は、呪文を唱えて水を出し、杖の先で器用に人の形にしたり動物の形にしたりして、演芸を見せた。

俺は、週に一度こうして魔法芸を見せていた。

勉強ばかりのこの国の、唯一の楽しみになれば。と思って始めたことだ。

ひととおり芸が終わり、拍手喝采に包まれる。やがて、子供たちや大人たちはまた勉強に勤しむため、家へと帰っていった。

俺は、杖をまた腰に挿すと家路につこうとした。

その時−

?「お待ちください!」

後ろから、だれかに声をかけられた。

驚いて振り向くと、そこには王家の印をつけた男が立っていた。

翔「……俺になにか、用ですか?」

?「翔様ですね?」


翔「はい。そうですが……」

すると、突然その人は俺の前にひざまづいた。

?「お探ししていました。お父上から、話は聞いていらっしゃいますか?」

翔「いえ……あの、これは……」

?「これはご無礼を……私、学ノ国国王陛下にお仕えする者です。翔様……貴方は今日から、陛下のお世継ぎ……学ノ国の第一王子となられるお方です。」

翔「お、王子!?俺が!?」

初めてきいた。そんなこと。

?「すまんな、翔。」

すると、突然木の陰から親父が姿を現した。

翔「親父!」

父「今日、家に帰ったら話そうと思っていたが……王家の迎えのほうが早かったみたいだな。翔……お前は、幼いときに海ノ国王家から俺のところに養子に出されたんだ。」

翔「!?」

父「驚かせてすまないな。海ノ国の陛下から、14になるまでは話すなと言われていたから。」

翔「……」

そうだ。今日は俺の14回目の誕生日だ。

父「お前を引き取るときにな。言われたんだ。お前が14になったら、学ノ国王家の王子になれ。とな。」

翔「……」

俺が、ずっと黙っていると親父は一枚の
写真を手渡した。

そこには、王と王妃らしき身なりをした夫妻の間に、五人の幼い子供が笑って映っていた。

父「その赤い瞳の子供が、翔。お前だ。」

翔「これが……俺……」

その時、おぼろげだった記憶が突然蘇ってきた。

そうだ、この緑の瞳の子が雅紀で、紫のが潤で、黄色が和……あと、青い瞳のが智だ。

父「思い出したか?」

翔「……うん。」

父「風の噂で聞いた話だが、そこの雅紀王子と智王子はほんとの王子になったそうだ。」

翔「っ!」

父「潤王子は海ノ国王室騎士になって、和也王子は今は智王子に仕えている、とも聞いた。」

翔「……」

つまり、それは……俺が王子になれば、兄弟に会えるってことか?

父「どうする?翔。俺はただ陛下に頼まれただけだ。お前の決断しだいだぞ。」

翔「……」

父「どうする?」

翔「……親父。」

決めた−

翔「俺……王子になるよ。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ