悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第二章〜
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〜翔SIDE〜
−学ノ国 城下街−
翔「さあさあ、よってらっしゃい見てらっしゃい!」
俺は、たくさんの民衆の前で杖を操りながら叫んでいた。
翔「見たいやつだけよっといで!もうすぐ始まるよ!」
子1「翔兄ちゃーん、早く始めてよー!」
子2「またあの魔導見せてー!」
翔「はいはい!それじゃあ始まるよ!」
俺は、杖を振りかざした。
翔「最初の演目は、水芝居だ!」
俺は、呪文を唱えて水を出し、杖の先で器用に人の形にしたり動物の形にしたりして、演芸を見せた。
俺は、週に一度こうして魔法芸を見せていた。
勉強ばかりのこの国の、唯一の楽しみになれば。と思って始めたことだ。
ひととおり芸が終わり、拍手喝采に包まれる。やがて、子供たちや大人たちはまた勉強に勤しむため、家へと帰っていった。
俺は、杖をまた腰に挿すと家路につこうとした。
その時−
?「お待ちください!」
後ろから、だれかに声をかけられた。
驚いて振り向くと、そこには王家の印をつけた男が立っていた。
翔「……俺になにか、用ですか?」
?「翔様ですね?」
翔「はい。そうですが……」
すると、突然その人は俺の前にひざまづいた。
?「お探ししていました。お父上から、話は聞いていらっしゃいますか?」
翔「いえ……あの、これは……」
?「これはご無礼を……私、学ノ国国王陛下にお仕えする者です。翔様……貴方は今日から、陛下のお世継ぎ……学ノ国の第一王子となられるお方です。」
翔「お、王子!?俺が!?」
初めてきいた。そんなこと。
?「すまんな、翔。」
すると、突然木の陰から親父が姿を現した。
翔「親父!」
父「今日、家に帰ったら話そうと思っていたが……王家の迎えのほうが早かったみたいだな。翔……お前は、幼いときに海ノ国王家から俺のところに養子に出されたんだ。」
翔「!?」
父「驚かせてすまないな。海ノ国の陛下から、14になるまでは話すなと言われていたから。」
翔「……」
そうだ。今日は俺の14回目の誕生日だ。
父「お前を引き取るときにな。言われたんだ。お前が14になったら、学ノ国王家の王子になれ。とな。」
翔「……」
俺が、ずっと黙っていると親父は一枚の
写真を手渡した。
そこには、王と王妃らしき身なりをした夫妻の間に、五人の幼い子供が笑って映っていた。
父「その赤い瞳の子供が、翔。お前だ。」
翔「これが……俺……」
その時、おぼろげだった記憶が突然蘇ってきた。
そうだ、この緑の瞳の子が雅紀で、紫のが潤で、黄色が和……あと、青い瞳のが智だ。
父「思い出したか?」
翔「……うん。」
父「風の噂で聞いた話だが、そこの雅紀王子と智王子はほんとの王子になったそうだ。」
翔「っ!」
父「潤王子は海ノ国王室騎士になって、和也王子は今は智王子に仕えている、とも聞いた。」
翔「……」
つまり、それは……俺が王子になれば、兄弟に会えるってことか?
父「どうする?翔。俺はただ陛下に頼まれただけだ。お前の決断しだいだぞ。」
翔「……」
父「どうする?」
翔「……親父。」
決めた−
翔「俺……王子になるよ。」