悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第五章〜
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〜翔SIDE〜
兵「国王陛下、王后陛下、翔王子に伝令ー!」
広間で家族三人で話をしていたその時、兵士のひとりが息を切らせながら走ってきた。
王「何事だ。騒々しい……」
兵「はっ、申し訳ございません……」
王「して、伝令とは?」
兵「たった今、国境警備の兵からありました。森ノ国が滅ぼされた、と……」
翔(えっ?)
なにがなんだか状況が飲み込めない。ようやく落ち着いたところで、まずはじめに思い浮かんだのは、雅紀の姿だった。
翔(雅紀……)
王「なにっ!?国王陛下と王后陛下はご無事なのか!?」
兵「それが……警備兵が見つけたときには、もう焼死体だったようで……お二人の命は……」
王「では、息子のほうはどうなのだ!?まさか息子である雅紀王子さえ……」
兵「……いえ、雅紀王子の遺体なら見つかりました。なぜだか井戸にあって……それで焼かれずにすんだかと……」
翔「っ!」
−聞きたくない答えが、返ってきてしまった。
王「……そうか。手厚く葬ってやれ。」
俺は、思わず真っ白なソファーから立ち上がった。
体は、動揺しきって小刻みに震えていたままだった。
王「翔……?どうかしたか?」
妃「顔色が優れませんよ、翔……少し休んで……」
翔「っ……」
俺は、母上の手を振りきって自室に駆け込み、ベッドにダイブした。
途端にあふれでる、無数の涙。
翔「うっ……ううっ……まさっ……きっ……」
信じらんねーよ。あんなに笑ってたくせに。なんで死んだんだよ……
ア「……あの、翔王子……」
アルの声が聞こえた。
ア「あの……大丈夫、ですか?お父上もお母上も、貴方様を心配なさっていますが……」
翔「……」
ア「……雅紀王子のこと、ですか?」
俺は、静かにうなづいた。……さすがはアルだ。勘がいい。
翔「……なあ、アル。」
ア「はい。」
翔「森ノ国を滅ぼしたやつは、見つかっているのか……?」
ア「詳しくはわかりません。ですが……先程、決定的な証拠が見つかった、と兵士から連絡がありました。」
俺の体が、ぴくりと反応を示した。アルは、さらにつづけた。
ア「森ノ国の宮廷の瓦礫から、海ノ国のエンブレムが見つかったらしく……しかも、エンブレムは雅紀王子の遺体が遺棄されていた井戸の近くに落ちていたそうです。ですから……恐らく、海ノ国の者の仕業かと……」