悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第六章〜
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〜智SIDE〜
大「智様!大変です!民衆が武器を持って城に!」
智「……そうか。」
心配したとおりだ。……いや、俺はこうなっても仕方ない運命なんだ。
智「下がれ。大臣。」
大「しかし……」
智「いいから下がれ!……あとの命令は、お前たちに任せる。」
大「御意……」
大臣は肩をすくめ、そそくさと部屋からでていった。
和「智……いいのかよ……」
智「……いいんだ。所詮俺は悪ノ王子。民衆どもに殺されることが、犯した罪の報いなんだ。」
和「でもっ……」
智「和。」
俺は、ソファーから降りると和と向き合った。
智「小さい頃……お母様に言われたでしょ?自らの罪は自ら償え。それが嫌なら罪は犯すな……って。覚えてる?」
和「……」
智「俺は、罪を犯した。だから、自分でその罪を償わなくちゃ。」
和「智……」
智「……クローゼットの裏に、抜け穴がある。」
和「え……?」
智「クローゼットの一番奥に隠し扉があって、その先に抜け穴があるの。城の裏に出れるようになってて……」
和「それって……」
智「……当たりだよ。お願い。和はそこから逃げて!」
和「っ!?」
智「和には生きてほしいの……だから、行って!」
和「い、嫌だ!俺は智と……」
智「和也!王子の命令であるぞ!」
俺は、涙を堪えながらそう怒鳴りつけた。和は、肩をびくりと震わせるとどこかへ走り去ってしまった。
……これで、よかったんだ。
死ぬのは俺だけで……俺ひとりでいい。
でも……ほんとは寂しい。
あーあ、最後までひとりきり、かあ……
ほんとは、だれかにいてほしいのに。
そう。ほんとは……
そのとき−
和「智。」
和の声が、後ろから聞こえた。驚いて振り向くと、そこには……
智「……え?」
俺そっくりの格好をした、和が立っていた……