月夜のwizard vampire
□5.悲劇
1ページ/8ページ
翌日から、俺の魔法の訓練が始まった。
しかし、訓練はさほど続きはしなかった。なぜなら、わずか一週間足らずで俺はすべての魔法を習得してしまったから。
自分でも驚いた。ここまでできるなんて、思ってもいなかったから。
式は来月の、満月の夜。また同じ祭壇で式を挙げることになっていた。
けれど……悲劇は、突然訪れた。
その日、俺はひとり部屋でぼんやりとベッドに寝転んでいた。
すると、扉が鳴ってショウが入ってきた。
智「あ、ショウ!」
ショウ「悪い、起こしたか?」
智「ううん、平気。どうしたの?」
ショウは軽くはにかむとなにか光る物を俺に見せた。
智「これは?」
ショウ「魔帝王家に代々受け継がれる、婚姻の証のペンダントだよ。家紋を象っていて……ほら、綺麗でしょ?それぞれの国の象徴のクリスタルを使用しているんだ。」
智「へえ……」
聞けば、それぞれの角のクリスタルの色は風属性のウィーフル国の黄緑、雷属性のサンターナ国の黄色、水属性のウォーモ国の青、土属性のグラーン国の茶、木属性のリフラーナ国の緑、火属性のフライア国の赤の六色で枠がブラーニア国の黒を表しているらしい。
そして、真ん中の家紋は光属性のライタル国の白。たしかに、よくできている。
ショウ「で、ちょっと早いけど智にどうかなって……」
智「……いいの?」
ショウ「うん……大丈夫。式でまた改めてつけるから。」
そう言うと、ショウは優しく俺の首にペンダントをかけた。
智「俺なんかに似合うかなあ……」
ショウ「似合うよ……そら、できた。」
首元に揺れるペンダントは、時折光を受けてきらりきらりと輝いた。
智「綺麗……ありがとう、ショウ!」
ショウ「どういたしまして。」
その時−勢いよく扉が開いて兵士が駆け込んできた。
兵「し、ショウ様……大変です……」
ショウ「な、なにごとだ!」
兵「はい……リフラーナ国が……マサキ様の国が、突然フライア国を攻め込んで……ショウ様をださねば、今日のうちにフライアの国を滅ぼすと脅迫を……恐らく、狙いは智様のことかと……」