悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第一章〜
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〜和SIDE〜
−海ノ国 城下街−
賑わう街。華やかな音楽。学ノ国とは違う、自由さ。
この国へきたのは、いつぶりだろうか。
和「はあー……変わったなあ……」
俺は少ない荷物を持って、街の中をぶらぶら歩いていた。
今日、俺は14歳になった。
その晴れ晴れしい日に下された、父さんからの命令。
それは、海ノ国の城で王子に仕えること。
王子がどんなかたか。父さんはなにひとつ教えてくれなかった。
和(どんな人だろう……)
別れた兄弟のうちのひとりかな。ほんとの父さんは、確かひとりだけ残していたはずだから。
和(兄弟、か。)
俺は、父さんから渡された写真を見つめた。俺を引き取るとき、もらったらしい。
華々しい実母と実父に囲まれ、野原をバックに笑う俺ら。
元気よくピースして笑う、緑の目の雅紀。雅紀に押されて困ったように苦笑いする、赤い目の翔。その様子を冷ややかに見ながら呆れる、紫の目の潤。花輪をかぶってふにゃりと笑う、青い目の智。そして、智にべたべたとくっつく黄色い目の、俺。
和「……」
楽しかったあの日々は、とうに消えたはず
だった。
でも……どこかにその思い出は息を潜めて生存していた。
俺は、写真を丁寧にポケットにしまうとまた歩き出した。
しばらく行くと、なにやら人だかりに遭遇した。
和「……?」
人だかりを掻き分けて、中央に歩み寄る。そこには、立て札がたてたれてなにか書かれていた。
"王子が召使を求めている。
14歳で、赤・黄・緑・紫の瞳の少年。以上を召使の条件とする。
条件に値する者は城へ献上すること。
海ノ国王家"
和「召使……?」
女「なんだい、またあの王子のわがままかい。」
ひとりの女が、後ろで声を上げた。
和「すいません、その話……詳しく聞かせてもらえますか?」
女「あらっ、なかなかの好青年だねえ……王子のことを知りたいのかい?」
和「はい。」
女「あんたも物好きだねえ……いいさ、話してあげるよ。」
和「ありがとうございます。」
女「特別だよ。あんたは好青年だからねえ。」
女は、ひとつ咳ばらいをするとゆっくりと話し出した。
女「この国はね。とっても若い王子が治めているのさ。今日14歳になったばか
りの子供がね。そのわがままっぷりと言えば……あたいたちが生活で苦しんでるっていうのに、王子は優雅に菓子やらなんやら食べてんのさ。今回も単なるわがままさ。……そういえば、あんたは目が黄色いねえ。」
和「はい……」
女「珍しいね、目に色がある子なんて。」
和「よくいわれます。」
女「あんたが王子に仕えてくれたらいいのにね……まあ、他国民のあんたに相談したって意味ないね。」
和「……そうなんですか。ありがとうございました。」
女「礼なんかいいよ。それじゃあね。」
話を終えると、女はさっさと行ってしまった。
もう少し情報がほしい。そう思っていたその時だった。
?「またか……あれほどわがままは抑えろって言ったのに。」
紫の瞳の青年が、俺の視界に飛び込んできた。