悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第一章〜
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〜和SIDE〜
和「あれは……」
間違いない、あれは……
和「潤っ!」
すると、彼は驚いたようにこちらを振り向いて、人込みを掻き分けて近づいてきた。
潤「和!?和かよ!?うわあ、久しぶりだな!」
和「そっちこそ!元気?」
潤「おう!つーかお前、学ノ国飛び出してきたのかよ?」
和「うーん……父さんに言われて来たって言ったほうがいいかな。」
潤「どうしてだよ?」
和「海ノ国の王子に仕えろって。王子のそばにいてやれって言われた。」
すると、突然潤の顔から笑顔が消えた。
潤「王子……に?」
和「?」
すると、潤はふっと笑って口を開いた。
潤「……なるほどな。」
和「え?なにが?」
潤「和。教えてやるよ。その王子っていうのは……智のことだよ。」
和「智が!?」
ありえない。あんなにふにゃふにゃしてた、愛想を振り撒いて俺にくっついてきたあの智が。
潤「でも、たった11歳で王政についたから……今じゃすっかりわがまま王子。国民からの嫌われ者だよ。」
和「……」
潤「俺はわがままになっても、仕方が
ないって思うけどな。」
潤が悲しそうにぽつりと呟いた。
潤「10歳で親を亡くして、11歳で王政につかされて、いつもいつもひとりきり。それでわがままにならないほうが、むしろおかしいと思うぜ?」
和「……そう、だよな。」
潤「あいつ……すっげー笑うんだよ。俺が会いに行くと。一晩泊まってけとかも言われるし。でも、俺がいないともうわがまま放題でさ……親父から聞いたよ。」
和「……」
潤「だから、和がそばにいてやればあいつも喜ぶんじゃねーの?」
和「うん……」
そうか……だから父さんはなんにも言わなかったんだ。
潤「俺もたまに行くし……ま、頑張ってみれば?」
和「……そうだな。そうしてみるよ。ありがとな!潤!」
俺は潤に一言礼を言うと、智のいる城へ向かった。