悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第二章〜
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〜智SIDE〜
壁に掛かった時計を見る。もうすぐ時間だ。
智「和、行くよ。向こうでは、ちゃんと敬語で話してね。」
和「御意。」
俺は、和と兵士たちを連れて港へ向かった。
一年後に控えた、学ノ国との同盟調印。今日は、その話し合いの日だ。
港で学ノ国国王陛下を待つ。やがて、白い船が見えてきた。
俺は、陛下が大好きだ。幼い頃、まだ生きていた父様みたいに優しい方。
子のいない陛下も、ずいぶん俺を可愛がってくれた。
智「陛下、元気にしてるかな……」
白い大型船が港に留まる。ゆっくりと扉が開き、陛下が降りてきた。
智「陛下!」
王「おお……智王子!またいちだんと大きくなられて……」
智「陛下はお変わりありませんか?しばらくいらっしゃらなかったし、話し合いの日も延期なされて……俺、心配したんですよ。」
王「それはそれは……心配かけてすまなかったな。王子。なあに、養子ができたものでね。いろいろと世話におわれて。」
智「養子?陛下、養子をいただいたのですか?」
王「ああ。魔導が得意でな……もしかしたら智王子もご存知かもしれん。」
智「俺が、ですか?おかしいな……俺は、学ノ国に知り合いなどいないのですが……」
すると、陛下はふっと笑い、船に向かって叫んだ。
王「翔!降りておいで。」
翔……?……同名の子かな。まさか兄弟ってことは……
そんなことを考えていると、船から人が降りてきた。
白い服に、鮮やかな赤い瞳。
翔「お呼びですか。父上。」
そしてこの声。……まさか……
向こうも気がついたのか、優しく笑って手を振ってくれた。
……間違いない。彼は……俺の兄弟の、翔だ。
智「しょ、う?」
翔「びっくりした?智。久しぶり。」
俺は、あまりにも驚きすぎてその場から動くことができなかった。
王「大分驚きのようですな。しばらく王子同士で話すと良い。わしは先に城へ行っておりますから。……ああ、召使は残ったほうがいいだろう。そこの兵士たち。わしを案内しておくれ。」
そう言うと、陛下は城へと行ってしまった。