悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第四章〜
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〜智SIDE〜
翌日。王家の裏切り者は、のこのこと宮廷に出向きいやにうやうやしくひざまづいた。
父「お呼びでしょうか。智王子。」
俺は、玉座に座ったまま彼を見下ろし、表情ひとつ変えずに話を始めた。
智「ごくろうだったな。さて……お前には、聞きたいことがある。」
父「はい、なんでしょうか。」
智「最近、城の食料が減少しているのは知っているな?」
すると、彼の体がぴくりと動いた。
父「……なんのことでしょうか。」
……いやに白々しいやつだ。まあいい。
智「……とにかくそういうことだ。それで、どうも不審に思ってな。召使をひとり、見張りにいかせたのだ。」
父「……え?」
彼が顔をあげた。俺は、さらに言葉を続けた。
智「そこでな……お前と、お前の息子を見かけた、というのだ。」
父「っ!」
智「元からばれていたぞ。お前の悪事など……」
父「さ、智王子!これは……」
智「ええい、うるさい!言い訳などいらん!とにかくお前は王家に背いたのだ!お前は処刑だ!」
父「違います、王子!聞いてくだ……」
智「衛兵!そいつを連れていけ!」
俺は、彼のわずかな望みも跳ね退けて衛兵に命じた。
智「息子の命だけは救ってやる。それだけでも幸運と思うことだな。」
俺は、連れていかれる彼の背中に向かって冷たくそう言い残した。
俺は、玉座から下りると部屋に戻り、窓の外をみた。
そびえ立つ断頭台が、やけに不気味だ。……何分後だろうか。あの断頭台が真っ赤に染まるのは。
……ああ、愉快だ。愉快すぎる。こうして俺の国はできていくんだ!
部屋に、俺の笑い声だけが高らかに響いていた。