悪ノ王子〜哀しく輝く青ノ薔薇〜
□〜第六章〜
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〜智SIDE〜
智「へへ……どうかな?」
俺は、和に渡された服を着てまた戻ってきた。
和「似合うじゃん、智。」
智「ありがとう。」
俺は、いつもみたいにふにゃりと笑いながらそう言った。
……あ、こうやって笑ったのって久しぶりかも。
やっぱり笑ってんのっていいな。死ぬ前までずっと笑っていようかな。
そういえば、どうして和は俺と服を交換したがったんだろう。
俺は別にいいけど……でも、どうして?
智「ねえ、和。なんで俺と服、交換したの?」
和「……ああ、そうだ。説明しなくちゃね。……智。」
和は、俺の肩に両手を置くとゆっくりと口を開いた。
和「俺じゃなくて、智が逃げて!」
智「……え?」
俺の顔から笑みが消える。和は、俺から目を離さなかった。
智「う……嘘……でしょ……?」
けれど、和は首を横に振った。
智「や……やだ!そんなのやだよ!和が死ぬなんて……ねえ、一緒に逃げようよ!俺、和が一緒じゃなきゃ……」
和「智。」
和は、優しく笑いながら口を開いた。
和「それはできないよ。智がいなくなれば、きっと智は追われる。ひとつの事柄を終わらせるには、必ずひとりの人間が必要なんだ。俺は、お前を死なせたくはない。だから、俺がお前の身代わりになってすべてを終わらせる。」
智「でも!」
和「智!王子の命令であるぞ!」
智「あ……」
……そうか。もう、和は"悪ノ王子"なんだ。偽の"俺"なんだ。
だから、もうとうに死ぬ覚悟はできているんだ。
……でも、やっぱりいやだ!和を死なせたくないよ!
智「やだ……やだよう……和、死なないで……」
俺は、和にクローゼットに隠されながらも泣きながら和に縋り付いた。
すると、和は優しく笑って話し出した。