月夜のwizard vampire
□1.月夜
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なぜ降りてしまったのかは知らない。事実、無意識だったからだろうか。
次の電車は、15分後。肌寒い秋の夜に、ずっと待っているのも辛い。
智「……行ってみるかな。海……」
まあ、帰ってからあれこれ悩むのも嫌だし……しばらく浜辺を散歩してみることにした。
古い駅舎に似合わない、自動改札に定期をあてて駅を出て、そのまま夜の海へ繰り出した。
広がる闇に、海の波音だけが響く。
……こうやって歩くのも、たまにはいいかもな。
そういえば最近、釣りしてないなあ……近々くるか。
でもしけてるしな……でもたまには釣りでストレス解消してえ……
釣りしたい気持ちを抑えていた、その時だった。
智「……ん?」
遠くに、なにかぼんやりとした光が見えた。
智「なんだありゃ……」
俺は、その光に引き寄せられるように……いつのまにか、歩きだしていた。