□テレビと君
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「うっ……ぐす……」



暗闇に光を発光するテレビ
混じるのは嗚咽と紙切れの音

ー思い出したよ……マリアー
ーレオ!ー
ーわっ!……もう放さないー
ー私も。もう離れたりしないわー

テレビの中で抱きつき熱烈な口付けを交わす男女



「よかったぁ……よかったよぉ」

「そんなに感動するものかい?顔、ひどいよ」

「ぐす…うるさぁい…」

「……ハイ」



男が女にティッシュを渡す
受け取り涙する女は視線はそのまま受け取った



「(なんだか小動物みたいだな)」

「ふぇぇ……」



クライマックスを迎えエンドロールが流れてもまだ泣く女
それどころか男に感想を白熱しながら話す



「それでね、マリアが必死に頑張っているのを見て愛だなぁって」

「はいはい」



適当に相槌をうっていた男だが突然会話が途切れたことにより先を促した



「それでどうしたんだい?」

「それで……臨也ほ私が記憶を失ってもマリアみたいに奮闘してくれるのかなって」

「…不安になったんだ」



コクリと頷く女
男は最初こそ虚をつかれたかの様な表情だったが次第に緩んだ

女の腰に腕を回し男は抱きつく



「記憶を取り戻そうとは思わない」



男の一言に女の瞳は不安に揺らめく



「もう一度俺に惚れさせるだけだよ」

「臨、也……!」



女は感極まったのか男に飛び付いた
予測していたかの様に受け止める男



「本当苺は涙腺緩いよね」

「だって……んっ」



紡ぎかけた言葉は途中で消える
それは意図的にではなく押し付けられた唇によって



「……俺はそんな苺が好きだからさ」



女の目からまた嬉し涙が溢れた



テレビと君

「(テレビを見て泣く君が可愛くて、つい抱き締めてしまう

テレビの光よりも苺の頬を伝う涙の方が眩いなんて
相当末期だなぁ、俺も)」



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