頂いたもの・差し上げもの

□橋を架ける
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俺の仕事は

橋を架ける事だ。





今日も俺は橋を架ける為に汗を流していた。

秋になり多少は涼しくなったが、まだまだ暑い。


ゴーン


遠くで鐘の音が聞こえた。
俺の住む街では決まって昼の1時に鐘が鳴る。

俺は鐘が鳴ったら昼食にする事にしているので、作業を一時中断させる。


「ー…あ、」

俺はカバンの中を見て顔を歪ます。

弁当を忘れたのだ。

力仕事をした後なので空腹を知らせる音が虚しく鳴る


「あのっ!」

勢い良く声をかけられた。
見ると、顔を真っ赤にしたエメラルド色の瞳を持つ奴がいた。


「何?」

見かけない顔だな。

「お、お昼!一緒に食べませんか!?その、俺…弁当持ってきたんで!」

「はぁ?」

「そ、その、嫌なら別に…えっとー…」

挙動不審に視線を動かす。

変な奴。


「別に良いけど?弁当無くて困ってたし」

午後からの仕事には、エネルギー補給は必須だ。

良く分からないが、食べ物をくれると言うのだから貰っておこう。


「ー…は、はい!」
そいつは笑顔で俺の近くに駆け寄り大きなカバンから大きめの弁当箱を2つ取り出す。


「どうぞっ!」
と、勢い良く突き出してくる。

「ー…サンキュ。でもさ、何で俺みたいな見ず知らずの奴に弁当を?」

気になっているのは、そこだ。

そう言うと、そいつはエメラルド色の瞳を一瞬だけ大きくしてから

「な、何となくです」
と、視線を俺から泳がせながら言う。

なんつーか、嘘つくの下手だな。


「それより!!食べましょう!!」

と、その気になる事を言わずに自分の弁当を開けながら俺にも食べるように促す

まぁ、良いか。



「うまいな」

そいつが持ってきた弁当は俺がいつも食べている弁当の何倍も美味かった。

「良かったです!」

と、明るく言いつつ本人も弁当を食べる。


「そーいや、お前の名前って何て言うの?」

「あ、律って言います」

「ふーん、俺は政宗」

互いに自己紹介をする。






それから毎日、律は鐘が鳴る頃に弁当を持ってきた。いつのまにか律と2人で弁当を食べるのが俺の日常となり楽しい時間となった。


ゴーン


鐘が遠くで鳴った。


「政宗さん!」

律は笑顔で弁当を持ってきた。


そして、弁当を広げる。


「麦茶どうぞ」

律は麦茶を俺に渡す。


なんかー…

「嫁みたいだな」

言った瞬間、律は盛大に麦茶を吹く。


耳まで真っ赤にしながら


「な、何言ってー…」

と、混乱気味のようだ。


「いや、素直に思った事を言ったつもりだけど?」

律は「政宗さんって…」とジト目を送りつつ麦茶をチビチビと飲む。




「と言うか、マジで嫁に来いよ。」

ー…

シーン。


男が男に「嫁に来い」は、さすがに…アレだったか?

恐る恐る、俯いた律の表情を見ようとしたら…


律が、パッと顔を上げる


「お、お願いします!」


律は今までで1番の笑顔と真っ赤な顔で言った。
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