黒子のバスケ小説
□黄瀬誕 両手いっぱいに
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黄瀬涼太は、珍しく部活の練習が休みという事でいつもより早く家路についていた。
「はあー、やっぱバスケしたいっスわー。」
折角の練習が休みでもバスケをやりたがる、バスケ馬鹿。
今日はそんな彼の誕生日である。
朝から、クラスの人や、友達、ファンの子達や、部活の仲間達からお祝いの言葉や、プレゼントをたくさん貰って、左手にはプレゼントの山が入った袋がある。
あまりにも量がありすぎて学校の鞄に入らなかったので見かねた部活の先輩(主将)笠松が、たまたま部室に置いていたどこかのスポーツ店の紙袋を譲ってくれたのである。
「モデルも大変だな。ま、誕生日おめでとう」
そういって彼は、自分のクラスへと帰って行った。
「マジバにでもよって行くっスかね〜。」
そうつぶやいた時、 ブーブー という、振動がズボンのポケットから伝わった。
「ん?」ポケットから取り出された携帯。
中を開くと「メール1件」と出ていた。
「差出人不明?一体誰なんスかね?」
メールを開くと
「帝光中へ来い。」
と、一言書いてあるだけだった。
「?」
不審に思いつつも黄瀬は自分の通っていた帝光中へと向かう事にした。
* * *
帝光中につくと、1人の男子生徒が黄瀬に近づいてきた。
「あの・・・。」
「俺っスか?」
「はい、黄瀬先輩」
そういって男子生徒は持っていた物を差し出した。
「これを渡してほしいって言われたんです。」
そういって差し出されたのは、小振りの黄色いひまわりの花束だった。
「では俺は!」
「え。」
そういって去って行った男子生徒を、ひまわりを腕に抱えたまま黄瀬は呆然と見送った。
そのとき、再び ブーブー という振動が伝わる。
開くと「メール1件」「差出人不明」
「花束のリボンを見ろ。」
言われたとおりにリボンを見てみると黄色いリボンの後ろにもう1つ、赤いリボンがあり、そこには
「 3年の時の自分の靴箱を見ろ。 」
と、書いてあった。
「一体なんなんスか?」
校舎や風景を懐かしみながら、指定されたところへ行くとそこには
紫色のカードと赤いバラがラッピングされておいてあった。
「次はなんスかね〜、変な物じゃなさそうだし、なんか楽しくなってきたっス!」
バラとカードを取り、カードを開くと
「 男子バスケットボール部部室へ〜 」
と、書いてあった。
「バスケ部の部室?」
モデルやキセキの世代としても人気で有名な黄瀬に キャー! といって騒ぐ女子や、もも珍しそうに彼を見る男子たちに挨拶をしつつ部室へとたどり着いた。
そこで立ち止まって、今更ながら「俺勝手にここまで来ていいんスかね?事務の人とかに言ってないし・・・。」と、考えたりする。
しばらく考えていたが、もう過ぎた事だと開き直ってドアを開ける。
そこには、彼が使っていた頃と大して変わらない空間があった。
「なんか、中学時代に戻った気分スわ。」
ふと足下を見ると、
緑色のカードと紫のバラが置いてあった。
「今度は緑っスか〜、それと、またバラっスね」
バラを持ち、カードを開くと
「 ホワイトボードの裏を見るのだよ。 」←(笑)
と、書いてあった。
「なんか緑間っちみたいな言い方っスね!」
部屋の一番奥にあるホワイトボードの裏を見ると、セロテープで青いカードと緑色のバラが貼ってあった。
「ははーん。だんだん読めてきたっスよ!次には、絶対青いバラっスね!」
そういいながらカードを開くと
「 自分のロッカーを見ろ 」
「そういえば、靴箱も、今は他の人が使っているはずなのに、何もなかったっスね?
このロッカーも他の人が使ってるはずじゃ・・・?
まーいいっス、次、次!」
ふと思い浮かんだ疑問を追い払いつつ自分の使っていたロッカーをあけると、そこには
水色のカードと、青いバラが置いてあった。
バラをつかみカードをあけると、
黒く大きな文字で
「 最後です。体育館へ 」
と、書いてあった。
「赤、紫、緑、青、水色と黒・・・・・・。まさか・・・」
プレゼントが山のように入った紙袋を左腕に
ひまわりの花束を左手に
4色のバラを右手に、
彼は、懐かしくも慣れた足取りで廊下を走り体育館を目指す。
ガラッ!!
勢い良く閉じられていた扉を開く
すると突然
パンッ!パパパパンッ!!
「え?な?」
お祝いの席などでよく聞く パンっ というクラッカーの音と、そこから出たであろうリボンや紙吹雪。
そして、自分と帝光バスケ部のレギュラーをやっていたキセキの世代の5人と、
そして、彼らが卒業してからも、帝光を支えてくれている後輩達が一気に視界に入ってくる。
「 Happy Birthday !! 」
「お誕生日おめでとうございます、黄瀬君。」
そういって黄瀬の前に出てきたのは、水色が印象的な黄瀬の尊敬する人の一人黒子テツヤ。
彼は、手にした水色のバラを黄瀬に差し出した。
「黒子っち・・・、みんな・・・。」
涙がぽろぽろと頬を伝い落ちて行く。
みんなが彼を見て微笑む。
そうしてもう一度言うのだ、「 Happy Birthday 」と。
「みんな、ありがとうっス!!」
そういった彼も微笑んでいた。
黄瀬涼太は、珍しく部活の練習が休みという事でいつもより早く家路についていた。
その途中で懐かしい場所に行き仲間達とすばらしい時間を過ごした。
プレゼントが山のように入った紙袋を左腕に
自分の色のひまわりの花束を左手に
5色の思いがこもったキセキの色のバラを右手に、
両手いっぱいの幸せと彼は一生忘れられない誕生日を送ったのだった。