黒子のバスケ小説

□なんでもお見通し、だけど…。
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♩〜♫〜♬〜

微かな振動と共に聞き慣れたメロディーがはるの耳に届く。
それは、着ていた桃色のすこしかわいらしいパーカーのポケットから発せられていた。
鳴っているその曲はある人専用の曲であるためはるは携帯を確認する必要も無く電話の相手が彼だと悟る。

「・・・。」
ピっ。少し迷ってから携帯のボタンを押し電話に出る。
「もしもし?」
「やあ、久しぶりだねはる。」

電話の向こうからはやけにイケメンなボイス・・・(笑)
親しげに挨拶をするその人物は、去年までとある有名な中学校のバスケ部の主将を勤めていた 赤司征十朗 その人である。
彼は、4人の天才ともう1人特殊な少年と100人を超す部員達を1人で束ねる大変な立場にあったが、そんな彼も天才の一人であり、なぜ他の者達がついていったかというと、それは彼の類希なる人の上に立つという才能と技術によって見事に統率されていたからである。
そんな彼がなぜ彼女、 八神はる に親しく電話をしているかというと、
それは、彼女がまたその部活を支えるマネージャーの1人であった事と、彼とは運命的な何かによって繋がれた仲であり、親しい仲の者であるからである。
回りくどく言っているが、要するに好意を持っている相手であるからである。

「うん!お久しぶり赤司君。」
「ああ。・・・だが、あまり元気そうでは無いな。
 何かあったのか?」
「えっ」

突然の彼の台詞にはるは驚いたのかあまりちゃんとした反応を示せなかった。
「え、えとね、そ、んな事、ないよ?」
その上心配を掛けないようにするためか、無理矢理誤魔化そうとして逆にぼけつを掘っている。
もともと嘘は付けない人であるが、赤司にはこのキョドリがなくとも見抜かれていた事だろう。

「俺に隠し事が出来るとでも思っていたのか?」
「うう・・・。心配かけたくないもの…赤司君だって忙しいし….」
「はる、俺の事は気にするな。
 自分の心配をしろ。お前が元気ないと周りの人まで調子が狂うだろう?」
分のためを思っていてくれた事がうれしいのにそれを悟られまいといつもの調子で話を進める赤司。
「そうかな?」
「ああ。」
「赤司君は本当になんでもお見通しだね。」
懐かしみを帯びた声。
「あたりまえだろう。僕に分からない事なんてあると?」
「いいえ、赤司様の言う事は絶対!だね。ふふ」
「 ところで、一体何があったんだ?」
話が落ち着いた所で、彼は先ほどの質問に話を戻した。
はるも、しぶしぶ話を始めた。

「たいした事じゃないの・・・。
  ただ、なんか、寂しくなっちゃってね。」
「さびしい?」
彼女の小さくこぼした言葉を赤司は繰り返した。
すこし眉がよっている。これでもイケメンなのだから世の中ってやつは不公平だ。
「そう。赤司君や他のみんなに毎日あってたのに、高校に入ってからはみんなバラバラになったから・・・。
 たぶん、それかな?
 つい、みんなに呼ばれた気がして振り返っちゃう時があるの・・・。
 おかしいよね。ごめんね!
 あ!赤司君、私に何か用事あったんでしょう?」
理由を言うにつれてだんだん声がもっと小さくなって行くはる。
下を向いて胸の中にある感情を押し殺そうとする姿が赤司には見えた。
だが、このまま自分のせいで暗く落ちる話になるのを止めるべく、彼女は声をあげて話題を変えようとした。
が、彼には彼女の気持ちがわかる気がしたのだろう。
だから、はるが無理矢理話を変えようとしたのをよしとしなかった。
「はる。」
名前をそっと呼ぶだけで十分だった。
そこには、すべてが込められている。
「っ!あ、かし、くん。」
彼の一言にはるは泣き始めた。

「 ううっ、さ、みしい、よ。みんな、・・・も、だけ、ど

  ・・・・・・あ、あかしくんに、会いたいよ!」

赤司は、彼女のそばになぜ自分がいないのかと、なぜ抱きしめれやれないのだ、と密かに唇を噛み締めた。
だが、彼の噛み締めた唇は彼女の次に放った言葉によって知っている人が見たら絶叫するであろう、開かれたままになった。
そして、我が耳を疑った。

「ぼ  く、に?」
その色の違う印象的な両の目を微かに見開き聞き返す。
これも、知り合いが見たら世の終わりと思うだろう表情だ。だが、絶対な彼の表情をこうも簡単に崩せるのがはるなのだ。
だからこそ、彼は素になれ、彼女に好意を持ったのだろう。
もっとも、彼女に自覚なんて無いのだが。魔王様も形無しだ。(笑)

「うん、・・・そっか、わたし、あかしくんにあえなくて、さみしかったんだ。」

電話越しにも彼女が笑った事が分かる。
嬉しそうな声と、伝わる雰囲気。

「・・・2時間だ。」

強い決意のこもった声、

「へ?」

「そのまま待ってろ!僕が会いに行くから。
 だから   」
「  待ってる。」
はるの言葉がおわると、通話は切れた。


次に二人が繋がるのは、2時間後。

赤い彼が金の彼女を抱擁し胸の中にある感情を解き放つまで。
あと、少し・・・。





そして、未来を見通す神の如き瞳は女神を・・・・・・
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