フェアリーテイル小説

□その笑顔、太陽の如くしかし人の如く
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にかっ!

彼が嬉しそうに笑う時そんな音が聞こえる気がする
もちろん気のせいだが、それくらいにおもいっきり笑うの

彼が笑うと周りの世界が輝きだす
その笑顔は、まるで世界を光で満たす太陽のよう
でも、すこし子供っぽく見えて
それは彼が太陽ではなく私と同じ人間だと思い出せてくれる

彼がこの笑顔を出してくれる時は、決まって何かが良い方向へ転ぶ時。
どんなに悪い状況下でも彼が笑うと、仲間も、敵も、それ以外の人も彼のその笑顔・気持ちに包まれ自分を振り返り、良き方向へと向き救われる。
私はいつも彼のこの笑顔に救われて来た
例えば、波乱の後に彼が笑うと、やっと終わったのだと思える
例えば、楽しい時、嬉しい時、悲しい時、寂しい時、怒ってる時、黄昏れてる時・・・
いろんな感情の時にこの笑顔を見ると安心できる
そんな時に思うのは、やっぱり彼の笑顔は太陽みたいだね。という事

そんな彼でも、いつもその笑顔をしている訳ではない。
人間らしく、企みの笑顔、悪い笑顔、引きつった笑顔、などさまざまな人間的なものも見せる。
すべてが完璧な良いものな訳ではない、だからこそ彼は人間なんだね。と思える。
それは大切な事。
太陽でもいつも笑い続けている訳ではない。
本当に心のこもった笑顔でなければ大切な事伝わらない。
休みがあって当然。
これは笑顔だけの話じゃないね。すべてに通じるもの。



さて、私が今何故こんな事を語っているのかというと

それは、今彼と二人っきりでいるからです。
もちろん、楽しい状況ではありません。
なぜなら・・・
依頼で、ある盗賊団を追っていた所、敵の魔導士の捕縛魔法により捕まって
現在、倉庫に閉じ込められているからです。
いつもの状態ならば簡単に脱出できるだろうけれど、残念ながら今はナツ君と私は魔法が使えません。
魔法が使えなくための手錠をかけられてしまっているのです。
さらに残念な事にこの手錠を解除するための鍵は盗賊のリーダーが持っているんです。
私たちだけがなんとかして脱出してもこの手錠を外さない限り魔法は使えず、クエスト達成が出来ないのです。

さて、いつも一緒にいるハッピー君がいないから2人という状況なんですが、
ハッピー君には、鍵を手に入れてもらうために動いてもらっています。
1人だけでは心配ですが、何か策があるらしく意気揚々と飛んで行きました。
あ、ハッピー君は魔法が使えないただの通りすがりの猫だと思われたらしくって、私たちが捕まった時に捕まりませんでした。

「くっそー!!外れねー!!」
なんとかして外そうともがくナツ君。
でも、魔法が使えないからいつものパワーも半減以下。
「ナツ君落ち着いて?
 あんまりやると手首もっと怪我しちゃうよ・・・。」
そう言って彼の手を引き寄せて手首を見てみると、案の定赤くなっていて少し血が出ていた。
「あー?大丈夫だって!
 こんくらいなめときゃー治るって、だから気にすんな!」
「だめ!菌が入って大変な事になるかもしれないんだよ?
 ちょっとまって・・・。」
私は胸元にいつも着いている白い大きなリボンを解き真ん中で破った。
すると、2つの長い布が出来る。
次にその布を1つとりナツ君の右手首を巻いていく。
「お、おい!はる!」
ナツ君が焦って声を上げる。
それでも、私は布を包帯代わりに巻き、解けないように縛る。
それが終わると同じ作業を左手首にも施した。
「はい!出来上がり。」
手を ぱんっ と、たたく
「あーあー、もったいねー」
「リボンはまた買えるでしょう?
 でも、ナツ君に何かあっても替えが無いんだからね!もっと自分を大切に!ね?」
私は、実はお気に入りのりぼんをナツ君がもったいないと言ってくれた事がうれしかった。
でも、どうじにもうすこし自分の心配もするべきだね、とも思った。

そうしてしばらく私たちはいろんな話をして過ごした。
「・・・ハッピー君大丈夫かな?」
「大丈夫だって!」
少し不安になった私を元気づけようとそれからナツ君は楽しい話をいっぱいしてくれた。
でも、どんどん時間が経つにつれて私は怖くなってきた。
周りを壁に囲まれた小さい倉庫に、窓は少し高い所にあるだけの小さいもの。
日が落ちて暗くなったいったのだ。
私は暗い所が少し苦手で、闇に包まれる感覚がどんどん恐怖心を扇いでいくんです。
目を瞑って手をぎゅっと握った。

ぎゅ

「へ?」
誰かが私を包んでくれた。
誰なのかは目を開けなくてもここには私とナツ君しかいないから分かるけれど、反射的に目を開ける。
「大丈夫だ。俺がいるだろ・・・」
「・・・うん・・・」
ナツ君の私よりも少し暖かい体温が伝わってくるのが気持ちよくて、少しずつ安心する。
「ナツ君、あったかい・・・」
ナツ君の服をぎゅっとつかむ。
「あたりまえだろ?俺は炎の魔導士なんだかんな、体温は高いんだよ。」
「えへへ、そうだね・・・」
私を包んでいた闇はナツ君の抱擁が払ってくれて、
恐怖をナツ君の体温が払ってくれている。
もう怖くない・・・
「(でも・・・)」
もう一つわがままを言っていいのなら、
「・・・ナツ君の笑顔が見たいな・・・」
「?見てどうすんだ?」
当然疑問に思うナツ君だが
「え?!わ、私声に出してた?」
無意識だったため気がつかなかった。
「あーで、なんで見たいんだ?」
首を振った後に不思議そうに首を傾けるナツ君。
「うう・・・ナツ君の笑顔見るととっても安心するから・・・つい・・・ごめんね?」

ふわっー・・・
少しビックリした表情をした後、そこには太陽のようなあの笑顔があった。
つい見とれる。
何回見てもやっぱり好きな笑顔がそこにはあった。

「これでいーのか?」
「うんっ」
「こんなんではるが安心するなら、いつでも笑ってやるよ!」
「ありがとう!ナツ君!」


*   *   *


ガンガンガン!

「ナツー!はるー!」
何かをたたく音に目が覚める、どうやらあの後寝ていたようだ。
音のする方を探すと、上にある窓にハッピー君がいた。
『ハッピー!(君』
「えへへ!鍵とって来たよ!!」
そう言ってハッピー君は持っていた鍵をみせる。
「でかしたぞハッピー!」
「うん!はいっ!」
投げられた鍵が宙を舞う。
ナツ君が見事にキャッチ。

私たちは手錠を外すと、フェアリーテイルの一員らしく倉庫を破壊し出て行った。
外に出ると。
騒ぎに気づきやってきた盗賊達が集まっていた。

「なっ!!」
「あいつらどうやってあそこから!!」
「み、見ろ!あいつら手錠がついてないぞ!!」
「なんだと!!」
「やつらをつかまえろー!!」

「ところでハッピーどうやって鍵とったんだ?」
「ふふーん!あのね、鍵持ってるやつが寝た時にかぎとって、口に魚を入れて来たんだ〜ちょっともったいなかったけど・・・」

「へ〜、んじゃさーて、たっぷりお返ししすんぞー!
 行くぞ!はる!ハッピー!」
「うん!」
「あいさー!!」




にかっ!

彼が嬉しそうに笑う時そんな音が聞こえる気がする
もちろん気のせいだが、それくらいにおもいっきり笑うの

彼が笑うと周りの世界が輝きだす
その笑顔は、まるで世界を光で満たす太陽のよう
でも、すこし子供っぽく見えて
それは彼が太陽ではなく私と同じ人間だと思い出せてくれる



その笑顔は太陽みたいで、でも人間やしくて、私は安心して、

そして、とても好きな笑顔だー・・・




.次、あとがきとおまけあります。
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