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□I like your voice
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いつの日か母親が歌ってくれた子守唄が大好きだった

自分で歌ってみてもなんかしっくりこない
歌う人の声でずいぶん違うものだ

あの優しいやわらかい声をもう一度




ある日の放課後、バスケ部を終わらせた悠は忘れ物のプリントを取りに行くため廊下を歩いていた

「何で忘れてたんだろう…」

あまり忘れ物をしないたちなのだが今日に限って忘れていた

あいにく今日はテレビの捜索もない

自分のクラスの教室のドアを開けようとしたとき
かすかに歌う声が聞こえた
「〜♪」

「?、(誰かいるのか)」
そんなことを思いつつドアを開けた

そこには一人窓側で歌っている陽介の姿があった

頭にヘッドフォンをしていてそこからかすかに音が漏れていた
英語の歌詞だろうか
悠が入っても全く気がつかない

「陽介?」
「〜♪」
「よーすけ」
「うわっ!!」

呼んでも聞こえなかったので顔を覗きこむとやっと気がついたのかびっくりして窓のかどに頭をぶつけた

「っー!」
「だ、大丈夫か?」
「多分…」
「こんなところで何してた?もう、下校時刻になるぞ」
「え、もうそんな時間か?」

自分の机に行って中からプリントを出す

「あぁ、で。何してた?」「……練習」
「練習?何の」
「歌」

教室で歌の練習をするのなら音楽室を使えばいいのにと思い呑み込んだ

しかし、音楽の歌のテストはないはず

では、なぜ?

「さっき歌ってた曲は何だ?」
「あぁ、里中に借りたCDの曲」
「里中がそんなの持ってなのが意外だ」
「だよなー。けどこの曲ノリはいいんだよなー」
「へー」

そんなにノリがいいのならば一度聞いてみたい

「聞きたいな」
「聞くか?じゃあほら」

陽介がヘッドフォンをとって悠にかけようとしていたがその手を押さえつけて
止めた

「悠?」
「陽介の声で聞きたい」
「俺の声!」
「あぁ」
「けど、発音間違えるかもしんねーよ?」
「聞いたことないから大丈夫」
「………わかった…」


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