大空

□綺麗な雑草の抜き方教えて
1ページ/1ページ

それは、彼らにとって雑草。
自分という植物の養分を吸い取る雑草。
早く抜かないと、自分の養分がすいとられて枯れてしまう。
でも抜くにはもったいない雑草だった。
綺麗な花を身に着けて、その雑草はゆっくりと、でも確実に自分の花を吸い取っていく。

綺麗な雑草の抜き方教えて

「やあ、綱吉君。」

いきなり窓からひらりとあらわれた白蘭は機嫌がよさそうな、でも悪そうな声で言った。。
 かなり乱れさせた真っ白な髪の毛、細くて鋭い真っ白い瞳。幼い口調に声。

「何しに来た、白蘭」

それに対し沢田綱吉は資料にやっていた眼を彼に向けることなく感情がない声で淡々と言った。
 栗色のふわふわとした髪の毛、昔よりは鋭く小さくなったが明らかに普通の男よりは大きい瞳。声もまだ高い。

「冷たいな、綱吉君。」
「雑草と話す必要はない・・・だろ?」

資料にやっていた眼をチラリとびゃくらんに向け、机に置いてあるコーヒーを口に着けた。
 その目には嘘偽りなど存在しない。
 綱吉はまたすぐに資料に目を通す。
 
でも白蘭は笑ったまま、

「そのコーヒー、何入ってる?」

と、聞いてきた。
 綱吉も動揺することなく

「何も・・ブラック派だから。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
「目見て言いなよ。」
「雑草とめあわせる必要なんて―――」

 刹那、綱吉の頬が細い指によって挟まれる。

「いたっ・・!」

 無理やり首を動かされ、綱吉は苦痛の声を上げた。
 気づいたとき、綱吉の目の前には雑草といった目がある。真っ白な鋭い瞳がある。

「なんのまねだ・・・!」

綱吉は眉間にしわを寄せ、明らかな怒りをあらわにする。

「答えてよ。」
白蘭が言う
「何入ってるの?」

相変わらずの幼い口調、声。
 本来なら何の脅威も感じないはずだった。こんなに幼い男なんて、別に脅威なんて感じない。
だから別に、そんな質問は答えなくていい。嘘をついたって構わないはずなのに
なのに――――

「睡眠薬が・・少しだけ・・」

答えてしまった。
たかが、雑草に、たかが、雑草に!!

「そっか♪」

白蘭は笑う。

 白蘭はにっこりと笑ったまま綱吉の頬を挟んだ細い指を離す。
 綱吉は怒りとどこか名残惜しそうな顔をしていた。
 
白蘭は
「雑草君。好きだよ。」
といった。
綱吉は
「あぁ、俺も。雑草。」
と穏やかな口調で言った。

お互いに命を吸いあっているというのに、この愛しさはなんなのだろう?
絶対に駆除しないと抜かないといけないのに、愛なんていらないのに。

end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ