星屑

□すべては翼の中
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「おい・・・。」
「あぁ?なんだよ?」
「あれはなんだ?」
「・・・・・俺に聞くんじゃねぇ・・・。」
 
 「絶世の美女」とうたわれるスターダスト。その真っ白で光るような肌と、薄くキラキラと揺れるたびに粒子のように光り輝く長い髪の毛、胸は芳醇な物のなのだが、あまりに細い体は少し力を入れて折れそうだ。しかし、そのまるで獲物を狙う蛇のような金色の細い瞳はその細い体とは真逆に力強い。
 
 その彼女と羨ましい会話をしているのはいかにも悪子供のクロウ・ホーガン。逆立った橙色の髪と額、そして頬に刻まれたマーカーはその悪がきさを際立たせている。しかし、その子供と言った小柄さにもかかわらず、半袖のシャツから見えている小麦色の腕には筋肉がしっかりとついていた。
 
 しかし、その二人表情は、何とも言えない微妙な表情だった
「おい・・・。」
 
 スターダストが女にしては少しばかり低い、凛々しい声で言うと、それに対し、クロウは感情が入っているようで、入っていない声で返事をする。

「あぁ?なんだよ?」
「あれはなんだ?」
「俺に聞くんじゃねぇ・・・」
 
 通算19回。
 
 あと一回でこの会話は20回に達するところまできた。
 
 彼らが微妙な顔で、こういう会話を何回もするのは、彼らの死んだ魚のような目の先の光景に意味があった。

「おい、遊星。コーヒーだ。冷えるだろう?」
「あ、ブラックフェザー、すまない。助かる。」
「別にかまわない。それより、エンジンの方はどうだ?」
「調子はいいんだが・・・あと、一歩進めたいんだ。」
「なるほど・・・・せっかくだ。俺も付き合おう。」
「ありがとう。」

 パソコンという無機質な機械を前にして可愛らしい花の空気を飛ばす大の男。それも、ほとんど無口な男二人。
 
 ズズ、と入れたてのコーヒをすする不動遊星。蟹頭というちょっと特殊な髪型に、肌黒い体。苦労とは違ってすっかりと大人の男をしたからだは黒いタンクトップから出ている腕でわかる。しかし、その青く少々大きい瞳はどちらかというと中性的な顔をしている。
 
 遊星の隣でパソコンの光る画面を覗き込むのはブラックフェザー。真っ黒で少しばかり跳ねている髪の毛。鼻から下の口元は機微にまきつけているこれまた真っ黒なマフラーのように巻き付いている布で隠れている。彼はその隠れていない肌と真っ赤な瞳以外全身黒の男。
 
 だが、その二人が繰り出すその光景はあまりに穏やかで癒されるもの。
 
 実際、その光景を見ている微妙な顔をしたスターダストとクロウもかすかに癒されている。だが、それより強いのはもやもやとゆっくり、でも確実に広がり、心にはびこる「嫉妬」という感じに文字の言葉だ。
 
 それもそうだ、そのおだやかな空気を作っているのはスターダストとクロウの恋人であるのだから。

 「なんだよ・・遊星の奴、俺より、ブラックフェザーの方が好きなのかよ・・・あんなに普通に笑顔を見せるところ、俺に見せたことほとんどないぜ・・・」
 
 クロウはブスッと不満に満ちた顔をして、その光景がある一回を二階のさく越しで眺め、独り言をいう。その表情は悪子供というより、純粋に恋人を心配する彼氏、と言ったところだ。
 
 しかし、その独り言をスターダストは皮肉にも言い返す。

「哀れだな。マスターは何回でも私にあの笑顔を見せてくれるぞ。もちろん、あんな顔や、こんな顔も・・・」
「あーはいはい、そういう妄想は後でな。」
「妄想なのではないっ!このチビ!」
「チビとはなんだ、チビとは!?」
 
 「チビ」というクロウにとって言われたくない言葉ベスト1位に当たる言葉を言われ、クロウはウガーッ、とスターダストに反発するも、スターダストはハッ、とあざ笑い、わざと彼女の190cm以上の身長を見せびらかすようにスクッと立ち上がいr、腰に手を付け、クロウの背の低い顔を覗きこむ。

「チビは、チビだろう? 168cm」
「んなっ!」
 
 否定のできない事実を耳でも、目でも実感させられクロウは唖然として、口を金魚のようにパクパクと動かすことしか出来なくなる。

「ふん、否定が出来ないか。この童貞!」
「童貞は余計だ!童貞は!」
「ふん、チビに童貞とは情けない。」
「テメェ・・・・」
 
 次々と言われる侮辱の言葉はクロウの心にナイフを突き刺すと同時に、心の中に秘めていた

 「嫉妬」同時に「怒り」という感情も芽生えてくる。
 
 いまだに「チビ」「童貞」などと並べられる言葉にクロウの額には次第に青い血管が浮き出てきて、遂に、プチッとそれが切れる音がし、バッと顔を上げる。

「テメェだってまだ処女に童貞じゃねぇのカ!?」
「は?」
「遊星にも突っ込んでないし(突っ込ませないけど)、ブラックフェザーにも突っ込まれてない。お前は俺異常に可愛そうなやつだな。」
「・・・はっ、マスターに笑顔を見せてもらえない哀れな負け犬の叫びだな。」
 
 悠々とした表情で言葉を返すスターダストにクロウは何も返せなくなり、いかにも悔しそうに歯を見せた。
 
 しかし、スターダストは内心焦っていた。クロウが言っていた言葉はすべてあっている。彼女の目的は最愛である遊星に自分の物を突っ込んで、最愛であるブラックフェザーに突っ込んでもらう事だ。だが、クロウに「童貞、童貞」と自分は叫んでいるものの、そういっている自分も実は童貞だったりする。

(なにをしているんだ、ブラックフェザー・・今は私に突っ込むことを考えてはくれないのか・・)
 
 今、自分はなんて変質的な事を考えているのだろうと自分で思う。しかし、こうも心の中がもやもやで、あんなことを言われては考えられずにはいられなく、彼女は策の下に視線をかすかにやった。
 
 下ではいまだに花を飛ばした光景がある。それを見るとスターダストの心の中でまたもやもやとしたものが広がっていく。
 
 それはクロウも同じだった。

(何してんだよ、遊星・・・今は恋人なわけなんだし、少しぐらいかまってくれたっていいじゃねぇか・・)
 
 親友であった時も機械第一。そして、恋人になった今でも機械第一。正直言ってしまえば、今すぐにでも遊星に抱きついて頬を摺り寄せたいところだ。だが、あんなに幸せそうに花を飛ばされては自分は何もできない。情けない。

だが、それはすべて彼ら・・いや、正確には彼の計画の通りだった。
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