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□ではそれをなんと呼ぶ
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朝から妙に周囲の視線を感じるなとは思っていた。
特に何かやらかした記憶はなく、同じ分隊長のハンジに至っては何故か必死に笑いを堪えているそぶりしか見せないし。
何かの勘違いかなと意識しないようにし始めた頃、午後の休憩時間にリヴァイが打ち合わせで席をはずした。
そうしたら、これまた何故かエレンに突撃された。

「あの、イレーネさんに質問があるんですがっ!」

この勢い任せ具合はきっと誰かからけしかけられたんだなと周囲を見渡す。すると、私達の会話が聞こえる位置にいる愉快な仲間達はほぼ全員聞き耳を立てているようだった。
ほんと何した私。

「昨日、リヴァイ兵長とデートしたって本当ですか!?」

「………は?」

「兵舎から街のほうへ行く二人を見かけたという人が…」

「確かに街へは行ったけど、ほとんど生活必需品買っただけよ?」


一昨日。訓練上がりのときにリヴァイが話しかけてきた。

「明日の休み、予定は」
「あー、特に無し。たぶん」
「街まで買い物付き合え」
「荷物持ちならお断り」
「どこに荷物置き忘れるかわかんねぇイレーネなんかに持たせられるか」
「私は子供か」
「…昼飯ぐらいなら奢ってやる」
「本当に!?行く行く!」
「単純度はガキ以下だな。明日11時半、兵舎前」
「了解っ!」

街について先に御飯奢って貰って、わたしもついでにあれこれ買って。夕方には戻ってきた。


「それデートじゃないですか!」
エレンが叫んで、周りも、やっぱりか!あの兵長が!おい、賭けは俺の勝ちだ。イレーネも女だったんだなぁ。なんて後半は特に失礼な言葉が聞こえてきた。言ったのどいつだ。

「あのねぇエレンくん、デートっていうのは最低でもどちらかがどちらかに恋心を抱いてないと成立しないの。私とリヴァイがそういう関係に見えるなら入隊時の精神鑑定やり直してきなさい」

誤解を招くと面倒なので周囲にも聞こえるよう大き目の声で言うと、次々と落胆する声が聞こえてきた。
っていうかみなさんもう隠す気ないですよね?

「でも俺達の班で「おい」」
エレンの背後から打ち合わせが終わったらしい、若干不機嫌なリヴァイの声がかかった。
周りにいたみんなはすでに遠い。逃げ足速いな。
固まってしまい振り向けないエレンをそのままにリヴァイは続ける。

「何の話をしてる」

その問いは私とエレンのどちらに投げかけているかはわからなかったが、目の前の後輩は答えられそうになかったので私が口を開いた。

「昨日街へ行った話。デートですか?って聞かれたからそんなわけあるかって訂正しといた」

お互い誤解されたら面倒だもんねと言ったら何故か不機嫌さが増したようで、リヴァイがエレンにハンジが呼んでいたと最低限の用件のみを伝え、可哀相に振り向くこともできなかった目の前の後輩は若干裏返った声で返事をして転がるように駆けて行った。

「そんな怒らなくても…訂正しといたって言ったじゃない」

するといきなりデコピンが飛んできた。
人類最強のデコピンは冗談じゃなく最凶。

「ったぁ!いきなりなにすんの!?」

「俺はエレンには怒っていない。怒りの対象はお前だ」

「は?なんで」

「その欠陥品の頭じゃ一生答えはでねぇだろうな」

呆れるような溜め息を吐いて、休憩は終わりだと告げ行ってしまった。
欠陥品といわれて否定したかったけれど、その溜め息の理由はどう考えてもわからなかった。

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