dream/short ブック

□世界の終わりのきっかけ
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現パロのようなSFラノベっぽいもの



休日、何も用事のない穏やかな午後、家の近くの喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、テーブルを挟んだ目の前に見知らぬ女が座った。
濃いグレーのスーツを着ていることから見た目は極一般的な勤め人のようだが、ガラガラの店内で相席する必要性は微塵もない。そもそも一言とも声を掛けずに相席をする時点でおかしい。
何かの勧誘か、まさかの逆ナンか。どれにしても想像した事柄に対する感想は「面倒」だったので、残りのコーヒーを飲み干し立ち上がる。

「リヴァイさん」

目の前の女が、確かに俺の名前を発した。何で知ってる。

「大事なお話があるから、座って」

帰っていただくのはかまいませんが、そうするとお宅まで訪問しなきゃならなくなるからと言われて自宅まで知られているのかと悪寒が走った。とりあえず、何故そんな個人情報を知られているのか聞き出すためにもう一度座る。

「お前は誰だ」

「落ち着いて聞いてね」

質問には答えず更に続けてとんでもないことを言い出した。

「貴方の首が飛ぶと、世界が滅亡するの」

そうか、宗教の類か。

「どこのSFからネタパチってきやがった」

「ネタじゃないわ。詳しい原理とどういう風にして滅亡するかはまだ未確定だけど。事実よ。」

「そんなとんでもない話信じられるか」

「一般人が知らないだけで、ざっくり言うと地球を滅ぼそうとする団体があるの。自分達は宇宙空間へ逃げ込む算段をつけてね。そこへ降って湧いたのが貴方の存在。たかだか一般人の首が飛ぶだけで地球が滅亡する確立が99.999%と出ちゃったのよね。さっきも言ったように原理はわからないんだけど」

「原理がわからねぇならその確率が出るのは矛盾してるだろ」

「うん…まあそこらへんはおいおい説明していくとして。信じる信じないは貴方の自由だけど、この結果が出た以上貴方狙われるわよ」

そういって差し出してきた名刺には会社名どころか名前も書いておらず、アドレスと番号の記号だけが羅列されていた。

「可能性段階から一応警護はつけていたけど。確定段階になった以上本人にも知らせておくことになってね。何かあったら連絡して」

何も頼まなかった彼女はそれだけを離すとこちらからの質問には答えないまま行ってしまった。
ったく、今日はどんな厄日だ。
変な白昼夢でも見たんだと思って忘れようと、伝票を持ってレジへ向かう。
見慣れた店主に伝票を渡した次の瞬間、店主は額から血を流してその場で崩れ落ちた。
音のしたほうを見ると、ガラガラの店内で俺と一瞬だけいた女の他にいた、唯一の客が銃を胸元にしまっていた。
レジの向こうに倒れた店主を見ると、右手には俺が渡した伝票、左手には肉でも解体するような大仰な刃物が握られていて。

それは人の首でも簡単に飛ばせそうな。

夢でも頭のイカれた戯言でもなかったのだとわかり、全身の毛穴が開いた。

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