dream/short ブック

□眠り姫の頬擦り
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イレーネは朝に弱い。
仕事の日は時間どおりには起きてくるが8割方大きな欠伸を携えてくる。
そして、寝ること自体が好きだ。
休日など寝るためにあるといったようにヘタすると昼食時間まで起きてこない。
よくここまで眠ることに対し貪欲になれるものだと、いまだ起きる気配を欠片も見せない彼女の寝顔を眺めながら思った。

通常6時起床のリヴァイが休日仕様で寝坊して起きたのは8時。
普段ならイレーネが起きるまでシャワーを浴びたり朝食を摂りに食堂へ行ったりするのだが、今日は腕を抱き枕代わりにされてしまっていて動けない。
いつも多少物音を立てても起きず、いったい一人部屋の宿舎で普段どうやって起きているのかと甚だ疑問に思うほどだが、流石にこの腕を無理やり引き抜いたら起きる気がする。…気付かず寝ている気もするが。

それでも、まさに眠っている今が至福、というような寝顔の彼女を起こしてしまうのはやはり気が引けるのでそこから1時間ほどリヴァイは粘った。眠ろうともした。
しかし規則正しく覚醒してしまった頭と身体は何もしないこの時間に退屈を訴えるばかりで。いくらイレーネの寝顔を眺めるのに癒されても身体が自由に動かせない状況もきつい。

そしてとうとう、できるだけ起こさないよう気をつけつつ、リヴァイは腕を抜くことを決心した。まずは腕にしがみついている掌を引き剥がそうと少しづつ力をこめていく。
右手が外れた。次に左手、と思ったら「んー、」と小さく呻り彼女がまたしがみついてきた。
腕だけでなく今度は頬まで寄せてくる。暖かい季節、寝巻きに半袖を着ていたリヴァイの腕に、今まで外気に触れていたためだろう、少しひんやりとした柔らかい頬が直に肌に摺り寄せられた。
頬擦りをする様子に起きてるのかとリヴァイは思ったが、寝ぼけていただけのようでまたすぐ規則正しい寝息をたてはじめた。

「…まだ寝るのか」

呆れと、少し哀愁が混じった呟きも、目の前の眠り姫には届いていない。

睡眠と俺とどっちが大事なんだ、と半ば真剣に起きたら聞いてみようかどうするか、リヴァイは思案に暮れた。

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