dream/series ブック

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エルヴィンに訓練兵団に放り込まれたのは、リヴァイが18の頃だ。
始めの1ヶ月は1年目の訓練兵に混ざったのだが、リヴァイにとって12歳前後の年齢は、本当にまだ子供だなという印象しか持てなかった。
同様に次の1ヶ月は2年目の訓練兵に交じり、そして今日から、3年目の訓練兵に混じることとなった。
15歳ともなると体格は大人とそう変わらず、中にはそこらの大人より体格がいいものもいるが、顔つきはまだ幼い。
とはいっても、この年代の3歳差は結構大きい。加えて、異例の途中入団ということでリヴァイが好機の視線を浴びてしまうのは仕方がなかった。


「おい新入り、俺の分の水汲みもよろしくな」

訓練後そういってきたのは、今日から大部屋で同室になる予定の男3人だった。3人とも何が楽しいのかニヤついている。
集団生活特有の、序列をつくろうとする輩は訓練兵団おの1年目、2年目どちらにもいた。
(ガキばっかりだ)
リヴァイは小さくため息をついた。
これが実技訓練後ならまた反応は違っていたのだろうが、班編成を組みなおすらしく、今日の訓練は座学や兵站行進など基礎的なものばかりだった。

「あんなぬるい兵站で疲れて水汲みもできないのか?なら逆に俺の分の水汲みして体力つけたらどうだ」

「なんだと?」

「なんなら隣のオトモダチ二人にも手伝ってもらえばいいじゃねぇか。それとも3人そろって水も汲めないほど貧弱なのか?」

「…の野郎!」

これが地下街だったなら、1対多数など不利な状況作るなど馬鹿なことを自ら進んでなんてリヴァイはしない。
しかしリヴァイにとって目の前の3人は体格こそよく見えるだけのただの子供だった。
まばたきする間に殴り掛かってきた3人を地面に転がしたリヴァイは、建物の陰のほうへ向いた。

「お前も俺に何か用か」

リヴァイが問い、そこから現れたのは女だった。
肩過ぎまである濃茶の髪を、縛ろうとしてたのか口に紐を咥え、手で纏めようとしている。

「すっごいね…」

放心した様子で咥えていた紐を地面に落とし、ぱちぱちと拍手しながらその女がリヴァイのほうへ近づく。

「1対3なんて卑怯だから助太刀しようと思ったら髪纏める前に終わっちゃった…」

「は、本気で助ける気があるなら髪なんて纏めねぇだろ」

「貴方だって挑発してたし、自信があるのかなって。それに髪纏めなきゃ長いと掴まれやすくて危ないんだから。それよりこいつら起こさないと」

「放っときゃいい」

「じゃあ貴方が3人とも宿舎まで運んで行ってくれる?」

「…」

「ね、嫌でしょ。頭に水でもかけたら起きるよ。汲みに行こう。手伝うから」

井戸のほうへ歩き出した女に、リヴァイが続く。

「私はイレーネ・シュミット。よろしくね」

「…リヴァイだ」

「知ってる。貴方有名人だし」

くすくすと笑ったイレーネの、髪より少し薄い色の瞳が、小さな明りの下で楽しそうに煌めいていた。




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