dream/short ブック

□精神崩壊
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二人一緒に呑み込まれてしまえばいいのに

同じ兵団に所属しているって言ったって一緒に死ねるわけじゃないし、どちらかがどちらかの知らない間に死ぬのは嫌だもの。
奴らは余り咀嚼しない。だから、丸呑みしてもらえばいいんじゃないかしら。
エレンくんが言っていたけど、巨人には胃のような器官があって、その中は胃酸のような液体に満たされていて、熱かったって。
呑み込まれたらゆっくり融けていって、吐き出されて。抱き合った私達は皮膚が爛れてきっと顔も判らないわ。
15m級の巨人なら二人一緒に丸呑みできるかなぁ。


シンプルなベッドの上でイレーネはずっとそんな譫言をぶつぶつ呟いていた。
視線は窓の向こうの壁に注がれている。巨人を求めているのだろうか。
一緒に死のうよ、と言っている[一緒]の相手がすぐ横にいるのに一瞥もくれやしない。
医者は精神的な疾患が回復する可能性は未知だと言った。
このままだとイレーネはこの施設でただ老いて死んでいくだろう。
自分はずっと傍にいてやることもできないし、同じように老いていけるかもわからない。

「また、来る」

その言葉はたぶん届いていない。

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