dream/short ブック

□逢魔が時
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演習続きの忙しい期間。不運なことに休みがさっぱり重ならず、気付けば2週間近くまともに話していなかった。
そんな中、隙を見つけて次の休みの予定を告げるとやはりリヴァイは仕事。予想はしていたけど期待あっただけに少しへこむ。

「来週には演習も終わるから、そしたら休暇も取れんだろ」

しょうがないよねと流した私を見透かすような気遣いの言葉も、少し物足りなく思ってしまう。リヴァイが悪いわけではないんだけど。



生憎、その休日は同じ班の面々も他班の友人とも都合が合わなかった。1日だらだら過ごすか出かけようかと悩んだ挙句、ここのところ宿舎と演習場を往復した記憶しかなかったため後者を選んだ。
ぶらぶらと目的なく街を歩く。店先を見て周ったり、カフェでコーヒーを飲んだりしていたら日が傾いてきたので、そろそろ帰るかと宿舎へ脚を向ける。

「あ」

見慣れた後ろ姿が目に入った。確か今日は本部で会議だと言っていたから、その帰りだろう。

「リ……」

呼ぼうとしたところで
視界にもう一人見知らぬ後姿が入ってきた。リヴァイより若干背が低いその人物は、なにやら親しそうに言葉を交わしながら二人並んで宿舎のほうへ歩き出した。
会議に出席した兵のうちの誰かだろうかとも思ったが、知らない誰かは私服で、パッと見兵士の体格ではなく華奢で一般人に見えた。
それから声をかける勇気なんて勿論なく、別の道から帰ったので二人がどこへ行ったのかは知らない。追いていけばよかったのかもしれないが、なんとなくそれはしたくなかった。



「うわっ」

プライベートと仕事は分ける。そう自分に百回ぐらい頭の中で言いきかせて訓練に出たのだが、完全に追い払うことはできなかったようで、演習中危うく落馬し駆けて肝が冷えた。
普段どおり接してきたリヴァイだったが、落馬しかけたことは気になったらしい。

「どうかしたのか」

「え、特に何も?」

「何もない奴が馬から落ちかけるのか」

なりたての訓練兵じゃあるまいし、と純粋な疑問をぶつけてくる彼を見ていると昨日のあれは夢ではなかったのではないかと思えてくる。
夢、なら覚めてよ。

「リヴァイ…さ、昨日どこにいた?」

「…?会議はいつもと同じ本部だったが」

「街で、リヴァイが軍服じゃない女の人と歩いてるの見たんだけど、あれは誰?」

なんとなく合わせるのを避けていた目を恐る恐るリヴァイのほうへ向ける。
目を伏せて考えて、直後上げた表情は少し訝しげだった。

「……昨日街で会ったのは男しかいない」

おとこ…オトコ……男!?

「うそ!?」

「てめぇは俺が成人男性の中で一番背が低いとでも思ってんのか」

「や、背が低いだけじゃなくて男性にしては髪長めだったし、体格も華奢だったし…」

「数年前班が同じだった奴だ。兵役検査に引っ掛って以降裏方にまわったがな。数年訓練に参加してなければ筋力は衰えるし、元々体格は小柄で細身だった…聞きたいことはそれだけか」

「あ…うん。あの、リヴァイ、」

「ならいい」

謝ろうとしたら話を畳まれてしまった。きっと私が馬鹿な勘違いをしたことなんて、わざわざ謝らなくてもいいとでも思っているんだろう。
そんなところが、悔しいけれど好きだ。





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