dream/short ブック

□本日も平和です
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現在地点、我らが調査兵団団長の執務室の机の陰。

「今日はどうしたんだい?」

そういって、団長はイレーネにキャンディの入った瓶を差し出す。

「ありがとうございます」

キャンディを一つつまみ、包みを開けて口に頬張ると甘い味が口の中に広がった。

「…昨日同期達と呑みに行ったんですよ。皆で夜中まで呑んで帰ってきたら今日の朝起こられました。ムカついたので話ぶった切って「石より柔軟性がないリヴァイの頭なんて禿げちまえっ!」って言ったら激昂されたので現在逃亡中です」

「成る程…しかし禿げは言いすぎじゃないかい?男性は結構気にする部分だからね」

書類を書く手を止めず穏やかに話を聞く団長を見て、この穏やかさをほんの少しでいいからリヴァイに分配することが神様にはできなかったのだろうかとイレーネは嘆く。

「だって!男女混合だし、夜間外出届けは出してあるし、前後左右わからなくなるくらいまで呑んできたわけでもないし、帰ってくるのは宿舎ですよ!?これ以上どうしろっていうんですか!呑みにも行くなと!?私もう今年で23ですし。リヴァイなんてもっと年上だし。もうちょっと余裕ある大人の付き合いはできないのか!」

私達の付き合いは恋人同士というよりは、過保護な親と子供のようです、とイレーネは重く息を吐く。

「私もあんなリヴァイを見るのは初めてだから少し驚いているけれど、それだけ大事に想われているということではないかな」

「…大事にされてるのはわかりますよ。でも!ちょっと過干渉すぎるんです!」

そんな話をしていると外から人の足音が聞こえてきて、イレーネは息を潜め身を縮こませた。
ノックもなしに開けられ執務室に入ってきたのは、イレーネが想像したとおりの人物。

「エルヴィン、イレーネがここにいるだろう。出せ」

「さあ、ここには来ていないが」

「他の部屋は全部見てきたがいなかった。残るはここだけだ。出て来いイレーネ」

その言葉に、机の陰に隠れていた名前が恐る恐る顔を出す。

「ちょろちょろ逃げやがって…まだ話は終わってねぇぞ」

「だってリヴァイが」

「言い訳するな」

じりじりと机をはさんで牽制しあう二人。先に動いたのはイレーネだった。リヴァイの後ろにある扉からは逃げられないと判断したのだろう、回れ右をして窓から飛び降りた。

「ちっ」

ワンテンポ遅れてリヴァイも飛び降りる。
二人が飛び降りた窓からエルヴィンが下を覗くと、当たり前だがかすり傷一つも負わない二人が一方は逃げ、一方追いかけるために全力疾走していた。イレーネの逃げる方向からみて男子禁制の女子宿舎に逃げ込もうとしているようだが、おそらくその前にリヴァイに捕まるだろう。
今日も平和だと思いつつ、エルヴィンは机仕事に戻った。






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