dream/series ブック

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徹夜と巨人化実験の疲れから、昨夜は消灯前の自由時間から寝てしまったエレンは、いつもの起床時刻より早く目覚めた。
顔を洗い、着替えて地下から1階へ上がる。当たり前だが、まだ誰もいない。
食堂でお茶でも入れて待ってようかと城内を歩いていると、裏庭で素振りをしているイレーネの姿が目に入った。

「おはようございます!」

「おはよう、エレン。早いね」

「俺もご一緒していいですか?」

「いいけど、手合せはできないよ。今私しかいないし、万が一怪我したら駄目だから」

「あっそうか…」

残念そうな表情をするエレンを見て、少し考えてからイレーネは会話の間も休めなかった手を止めた。

「よし、こっちおいで。装備つけてないよね。貸したげる」

「でも手合せは」

「しないよ。エレンが私に向かって振るだけ」

木で作られた模造刃が刺さっている剣を両方エレンに渡し、手足のプロテクターにつけていたウエイトを外して芝生のほうへ放った。

「…言っとくけどエレンが本気でやっても当たる気はないからね」

その言葉通り、エレンはほとんど弄ばれるような形となった。
大振りは軽くよけられるし、甘い振りは腕で軽く刃の横をはじかれる。
フェイントを織り交ぜても引っかからず、しまいには足をひっかけられ尻餅をついた。

「当たんねぇ…」

その場で地べたに寝転んだエレンが肩で息をして、イレーネがうっすら汗をかいた頃には薄暗かった空もすっかり明るくなっていた。

「エレンは対人相手はあまり無い?剣筋がまっすぐなのは巨人相手にはいいけど対人相手には素直すぎ。どうしても対巨人用の剣筋になっちゃってる」

イレーネはエレンの脇に座り汗を拭った。
エレンは空を仰ぎながら、巨人用の剣で対人用剣術か…っていうかまずイレーネさんの反応速度が半端無かったしな…などぶつぶつ呟いている。

「エレンは強くなりたいの?」

「巨人を殺すためには、強くなきゃ駄目でしょう」

「じゃあ、巨人を殺したいのは何故?」

頬杖をつきエレンの本音を掬いだすようにイレーネは尋ねる。
自然と、エレンも起き上がった。

「…親の仇と…それから、昔幼馴染と約束したんです。壁の外へ行こう、誰も見たことのない景色を見ようと」

城内にちらほら人が見え始めた。起床時刻だ。

「君は昔の私に少し似ているね」

立ち上がり際にクシャリとエレンの頭を撫でて、イレーネは城内に戻っていった。


エレンとイレーネが朝練をする数時間前、真夜中にリヴァイは自室で数枚の資料を眺めていた。
イレーネの兵籍、査定等が書かれている資料だ。
内容に不審な点は見当たらない。
順番に並べ直し揃えて机の上に置いて、なんとなく視界に入ってきたのは経歴欄に書かれた[訓練兵団 首席卒業]の部分。

“亡くなった”

あのとき確かにそう言っていた。

「いつだ…なんですぐに…」

顔を顰めて呟いても、答えは出なかった。




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