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□超絶鈍感彼女改め超絶天然彼女
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俺の彼女は恋愛ごとに関し筆舌しがたい程鈍感だった。アプローチ期間は勿論、告白の時もコントのようだったのであまり思い出したくない。
20代半ばにも関わらず今まで恋愛経験がないようで(本人曰く「色ボケしてる暇がなかった」)、多少のことは覚悟していたが、ただえさえ少ない休日にデートをするのに鞄を俺と接するほうの手で持つとは思ってなかった。まさかこれ程までとは。これでは手も繋げない。もうすぐ付き合って2ヶ月になるというのに。
これは鈍感というより天然か?

周囲には特に付き合ってる等と公言はしなかったが近しい面々は雰囲気でわかっているようで、特にペトラはイレーネと仲が良いため色々と話でも聞いているんだろう、一度二人になったときにもう少し強引でもいいんじゃないですかとまで言われた。

「イレーネはあんな感じですからアクション起こさないとずっと平行線ですよ」


言われなくても、実際限界には近かった。ガキじゃあるまいし形にもなっていないデートには少し辟易していた。

「オイ、鞄貸せ」

いつものように俺の側に持っていた鞄をどかしてとりあえず手を空けさせようとする。

「え、なんでですか?」

「持ってやる」

「私彼氏にバッグ持たせるような彼女になるのは嫌ですよ」

いまだ慣れないからと敬語のままのような奴がよく言う。

「じゃあ逆の手で持て」

「…?はい」

意外と素直に鞄を持ち替えたので空いた手を握った。訓練しているとはいえ、男である自分の手より小さく柔らかい。

イレーネは少し驚いたようだったが、ようやく意図を理解したのか遠慮がちに手を握り返してきた。

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