dream/series ブック
□〜発掘編〜
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勝手知ったる人の部屋、昼食後の気だるい時間、私はリヴァイの部屋のベッドでゴロゴロしていた。
一応休日なのだが、団長に呼ばれたらしいリヴァイはちょっと行ってくるとさっき部屋を出て行った。役職付きの人は大変だな。
カシャン
何かが落ちる音がした。寝転んだまま部屋を見回しても特に異変はなかったが、右手につけていたブレスレットが消えている。
それにしてもベッドの上に落ちたのなら床に落ちたような音はしないはずなのだが。
起き上がってよく見るとベッドの右側と壁との間に隙間があった。ここに落ちたか。うつぶせになって隙間に腕を突っ込んで探る。
床より先に何かに当たった。
「?」
指先で摘まんで引っ張りだして驚愕した。
表紙には女性の裸体が写し出されている。確実に閲覧年齢制限のある本。
「おわあああああ」
今までリヴァイのものじゃないエロ本が部屋に置き忘れられてたり(即行ゴミ箱行だった)、本屋で買うところを目撃したら罰ゲームだったりと拍子抜けするような出来事ばかりだったが。
ベッドと壁の隙間って。これ決定的だと思っていいよね?
よかったリヴァイも男の子だったんだという安堵と、落ち着いてみると表紙の女性私と大分タイプが違うんじゃないかという小さな落胆と、色々な感想が入り混じってなんとも言い表しがたい気分だった。
だから部屋の主の帰還に気付かなかったのだ。
「オイ」
いつもと同じ声のはずなのに恐く聞こえるのは何故ですか。
入り口付近に立ったままのリヴァイは、しかし私の手元を見て何の本を持っているのかはわかっているだろう。これはプライバシーの侵害で怒られるか、まさかの焦る恋人の姿が見られるか。
全く予想できない次の展開の中、彼が発した言葉は予想外中の予想外だった。
「どれがいい」
「………どれって…?」
「素人がやると血液の流れを止めて最悪壊死もあるそうだからな。流石にそれは危ないから買った。方法ぐらいは選ばせてやる」
方、法…?壊死?
もう一度持っていた本に目を落とす。さっきは裸体の女性にしか目がいかなかったが、よくみると女性の身体には縄が複雑に絡みついており、タイトルには『緊縛・調教術』と書いてあった。
え?
緊縛?調教?
ガチャリと鍵が閉まる音がして我に帰る。元々来訪者は少ないうえに、来てもよっぽどのことがないとノックをせずに入ってくる人間はいない。そんな真昼間に何で鍵をかける。
兵舎の部屋がだだっ広いはずはなく、リヴァイが入り口からベッドまで移動するのに時間はかからない。ベッドの上で硬直してしまった私に、残り数センチというところまで顔を近づけてきて、首に右手をかけた。
圧迫感はないが、このまま絞められたら確実に死ぬ。
「どれがいい、イレーネ」
「…今は太陽の輝く真昼間ですが」
そういうと、私が持っていた本を取り上げベッドの足元のほうへ放った。
「昼じゃなければいいのか」
唇にキスを落とされて、耳に低く甘く囁かれる。
「夜にな」
しまった。