dream/series ブック
□貸出業務
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休日の午後、予定通りのノック音がしたので扉を開けた。
「いらっしゃい」
「失礼します」
部屋へ促すと、礼儀正しい少年は予想外の人物に対し一瞬その足を怯ませた。帰ると言い出されたら悪いのでそのまま扉を閉める。
…予告無しに愛想がいいとお世辞でもいえない兵士長がいたらびっくりするよね、そりゃ。
当の本人、リヴァイはというと、読んでいた本から顔を上げ、一瞬こちらに怖い顔(に、見える)を向けてまた本へと視線を戻した。そんな顔したら怯えちゃうって。
なんでこんな奇妙なことになったか、理由は少し前に遡る
言わばそれは趣味だった。部屋は本や論文で埋まっている。
中には所持しているだけで憲兵がすっとんできそうな内容のものもあったが、調査兵団内の隠し書庫のような役割を果たすことを条件に黙認されることとなった。
しかもエルヴィン団長が本格的に、ただし秘密裏に運用させようと隣との壁をぶち抜いた広い部屋を与えてくれ、外部から持ち込まれる資料も増えた。
部屋の主である私は実質隠し書庫の司書兼番人のようなものになったのだ。
その日はエレンの巨人化について調べるのだろう、とりあえず『巨人』についてタブーを含む関連資料を借りてきてくれとハンジ分隊長に頼まれましたという少年がきた。まだ幼さを残している。新兵かな。
「ハンジの貸出履歴に残ってないので面白い説だと思ったのはこれとこれかな。あとは最新の論文。履歴に残ってるので再度借りたいのとか出てきたらまた来て。
あ、一応袋に入れていってね。そのまま持ち歩くのはちょっとあぶないから」
「あ、はい!」
大量の本と論文に目を奪われていたらしい。
その辺りは少年が興味を持つような内容ではなく、学術的な分野だった。
「本、好きなの?」
「好きです。……知らないことを、知ることができますから」
賢そうな瞳。
その知的好奇心はきっと今の時代満たされてはいない。
「よかったら今度の休みに読みに来る?」
「え、でもここにある本って一定階級以上じゃないと」
「貸出はね。でも休日に先輩が後輩に美味しいお茶をご馳走するからおいでっていうのは禁止されてないし。
建前上、個人の部屋にこんな本や論文は置かれてないことになっているしね」
意図を理解したのか、少年は顔を輝かせている。
「そういえば、君名前なんて言ったっけ?」
「アルミン・アルレルトです!」
「アルミン君ね。はいこれ入室許可証。ハンジが書いたのは代理貸出許可証だから。次からはこっちを兵舎の管理人に見せると通してくれるよ」
そんなほほえましいやりとりだった筈なんだけど