dream/series ブック

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巨人の死骸から立ち上る蒸気の傍で叫ぶハンジを、その周りを取り囲む兵たちを、一番外側からイレーネは冷ややかな目で拱手傍観していた。

「イレーネ」

「ん、なに?」

リヴァイがイレーネに声をかけた時にはすでに普段の目付きに戻していた。

「エレンの巨人化実験の前にお前をテストする。異論はないな」

有無を言わせない問いに、イレーネは内心の高揚を抑え「わかった」と一言だけ返した。



「テストはいいんだけど、何をすればいいの?」

演習場まで移動して一度降りてから愛馬を撫でる。
馬に跨ったままリヴァイは話し始めた。

「ここから東の平地に1体、そこかに北にある林に1体、巨人のダミーが配置してある。
トップスピードを維持しつつ、ダミーについてる目標をそぎ落とせ。
馬術、立体機動術、剣術をそれぞれの地点にいる奴が見る。
俺がチェックポイントに着いたら煙弾をうつからそれを合図に始めろ」

「おっけー、了解いたしました兵士長!」

わざとらしく敬礼するイレーネを馬上から見下ろした。

「前も言ったが、使えないとわかったら構成から外す。…意味ねぇだろうがな」

この試験の前、ほとんどの調査兵団員は値踏みするような目でイレーネを見ていた。
ハンジは少し違って、イレーネなら大丈夫だよね?といった楽観的な期待を寄せていた。
決定的な違いはリヴァイだ。彼の「意味無い」は、「試験をしなくても結果はわかっているが、万が一の可能性と他の兵達の手前もあるからな」という意味だった。

「見ぬかれてるなぁ…これぐらいいいけど」

馬を走らせるリヴァイの背中を見送り、再び馬に跨ったイレーネがポツリと呟いた。
しばらくして、空に赤い煙弾が上がった。

「ガスよし、刃よし…行こう」

馬の背ぽんと叩いて、イレーネは駆け出した。

イレーネに行われた「テスト」の結果に、誰も何も言えなかった。
平地に置かれた1体目の足首に巻かれた目標を、トップスピードから正確にアンカーを打ち込み切り落とす。
即座に馬を呼び北の林へ。
再びトップスピードから林の入り口で立体機動へ移行し、ダミーを発見すると巨人の弱点、うなじ部分を深く抉った。

馬術、立体機動術、剣術…調査兵団に所属している誰もが、向上心に溢れているからこそ、イレーネの技術が調査兵団内でも上位であることがわかってしまった。
ダミーを回収したあと、集まったメンバーの顔を一瞥して、リヴァイはイレーネが班に加わることを了承した。





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