君の願い 私の夢

□第一章
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「ねぇ茜ちゃん、高血圧には何と何っていう種類があったんだっけ?」

「えっと…確か【本能性】と【二次性】じゃなかったっけ?」

「じゃぁ茜。心不全ってどんなやつだったっけ?」

「それは…心臓の障害により心臓の拍出機能が低下して、末梢や主要臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を拍出できない状態………ってコラ美穂!志穂!
そんなの自分で調べんかい!!」




ここはとある街の図書室。

テスト前日にもなって、ゲーセンやショッピングを堪能しすぎた茜たち3人は、少しでも罪滅ぼしになるようにと勉強するために図書館に立ち寄ったのだった。


もともと(勉強しなくても)ある程度点数の取れる茜を頼りに、今必死でテスト勉強に取り組む美穂。

適当に勉強をやっているフリをして時間を潰し、早く家に帰ってアニメを見たい志穂。



茜はこの2人といる時間が、何よりも大切だった。

今日もそれを感じながらヒソヒソ声で2人に勉強を教えていると……




キラッ



右目尻で、何か光るものを感じた。


何だろうと思い、光った方向を振り返ってみると、



そこにはスラッとした足を組んだ、雑誌モデルのようなひとが座っていた。

髪は耳ほどまで伸びたストレートで、その流行りのカットがもっと器量を整って見せる。

さっき光ったのはその人の腕時計で、よく見てみるとROLEXと刻印されていた。



こんなに容姿が素晴らしい人、今まで見たことない…。


茜がそう心で思っていると、向かいに座っていた美穂が興奮しながら話しかけてきた。



「ねぇ、あたしすごくイケメン発見したんだけどっ!もしかして茜ちゃんのタイプじゃない!?」

「うぇ!?な、そんな…うぅ」


ズバリ当てられたのに吃驚してうろたえていると、志穂がすかさず割り込んできた。


「『何で解ったの?』とでも言うところですか〜?茜さん♪
もうお年頃なんだから、恥ずかしがらないで言っちゃえよ〜」

「お年頃って志穂…。私もう今年で…」



発言しながらもその人を見ていると、その切れ長の眼がギロッとこちらを向いた。


ハッとして志穂の方に向き直すと、あちらも茜を見るのを止めた。



「び、ビックリした」

茜は思わず呟くと、美穂が擦り寄ってきて耳元でささやいた。


「残念だ…。あの人、彼女いるね」

美穂の言葉を聞いて、ゆっくりまたあの人の方を向くと、隣には紅いルージュがよく似合う女が座っていた。



なんだろうこのモヤモヤ感は。

茜は何か自分の趣味を人に真似されたような、自分のものを人に捕られたような、そんな気分がしてならなくなった。



もしかして………


これが、【恋】?


ボヤッと考える隙もなく、茜の出していた参考書は美穂にしまわれ、いつの間にか志穂が茜の手をひいて図書館を出ようとしていた。


「さっさと出よう」

志穂はそれだけを言うと、一目散に腕をグイグイ引っ張る。

「訳はあとで話すからね」

美穂に諭され、仕方なくそのまま美穂の家に行くことになった。






「実はさっきね…」

紅茶を淹れながら美穂は、さっきの女の態度について話し出した。

美穂によると、奇抜なヒョウ柄のコートをきた女は茜のことをジロジロ見た上に、「何でアイツ?変なやつ」ともうひとりのROLEXに呟いていたらしい。


そんなのには全く気づかなかった茜は、急にさっきのことが恐ろしくなってきた。



全然気づかなかった。
何で私が?
何かしたっけ…
そうか、彼氏さんのことを見すぎたから怒ってたのかな…

ガックリと肩を落とす茜に、志穂は笑顔で応えた。



「大丈夫b誰にだってあるんだからね」

「うん…ありがとう志穂」

「だから、茜は後釜じゃないよ?」

「……ん?」

「だからぁ、今から獲るのもアリだと思うよ、彼氏さんを」

「そうかな………って何でやねん!!!!」



こうして茜の密かな恋心は儚くもすぐに志穂と美穂に知られてしまい、2人は得意な妄想を利用し勝手に話を進めるのであった。



「まずは名前だよね〜美穂。あの人何て言うんだろう」

「桃李とか斗真とかじゃない?なんかイケメンだし」

「いや、これは一護!それか銀時、歳三、テツヤ、アラジン……の中のどれかだよ絶対!」




こうして茜の恋はテスト前の図書館で始まったのだった。

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