君の願い 私の夢

□第二章
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「もうー、志穂も美穂も勝手なんだから」


茜は数日前のことをありありと思い出す。

テスト前で勉強しなきゃいけなかったのに、私が図書館でROLEXの男を見つけてしまったせいで…

ろくに勉強もできずに、テストとココロを自らボロボロにしに行ったようなものであった。


ふぅとため息をつきながらバイトのレジをしていると、100円玉が入った箱を床に落としてしまった。



ガッシャーン



わぁお金…

何よあの店員ボーッとして。


周囲がザワザワし出すと、店に居た一人がサッと来て一緒にお金を拾ってくれた。




「あ、すみません!ありがとうございます……」


えっ、この人どこかで見たことがある。

スラリと伸びた長い足、シャツから覗く綺麗な鎖骨、切れ長の目に添う黒い睫毛。

そういえば、もしかして…!


「あの、…そういえば」

「ん。図書館で会った」


はっ、私なんかのことを、覚えててくれてた…?

私は素敵なひとを見つけたからROLEXを覚えていたけど、まさか山ほどいた図書館の女の中で、まさか私なんかのことを…。


「ほら、もう落としてはいけないよ」

集めた100円玉を私の掌に乗せると、すぐさま立ち上がってどこかにすうっと消えていった。


「あ、ありがとうございます!」


慌てて叫んだときにはもう隣に店長が居た。


「茜さんはここに入って何ヵ月になるんだ。もう少し落ち着きなさい」



はぁ、何やってるんだろう私。

過ぎたこの前のことを思い出して、ぼーっとして、お金落として、店長に怒られて。


私はカッコいいと思ったから、あの人のことを覚えてるだけで。


あの人はたた、腑抜けな私がへんてこすぎて印象的なだけだったんだろうなぁ。


そうは言いながらもしかし、もしかしてあの人も私と同じ気持ちかもしれないと考えてしまう自分も少なからずいる。



こんな薄化粧でボサボサな髪なんかじゃやっぱりだめだよね……


よし、ここは茜。頑張っておしゃれするしかないよね!!



茜は、流行りのチークに高いマスカラ、今時の雑誌も買って家に帰った。


やっぱり私…あのひとの事好きなんだ…。


久しぶりの恋。

滅多にない恋。


いつもは奥手で自分から積極的に行けない私だから、今回は自分からいってみようかな……。



そう密かに決めて、ベッドに入った。
























「いや、やっぱ寝れん!」

思い立ったらすぐ行動したくなる茜。


親友に報告してから寝ることにした。






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time 23:56
from 茜
to 美穂・志穂

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ちょっと聞いて♪
こないだ図書館で会った
イケメン覚えてる?

私のバイト先に
来たんだけど…(*´∇`*)

なんと!私の事を
覚えててくれたんだよ!!

やっぱイケメンだった。


私あのひとに…

恋してしまったかも★


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この時茜はまだ知らなかった。


次に何が起こるかを。


岳斗の本当の正体を。

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