満月

□虚無の先にあるもの
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その時僕は夢を見ていた。
荒れ果てた大地と無数に走る稲妻の空。目の前にはアクアフォースを使う蒼龍レオンくんがいて僕は彼とファイトをしている。ファイトは完全に僕の優勢でレオンくんは為す術もない。僕は楽しげにレオンを見下ろす。プラチナエイゼルがグローリーメイルストロームを一閃し共に崩れ落ちるレオンくん、彼の顔は敗北の絶望と僕への恐怖に満ち溢れていた。
勝敗が決まっても消えずに場に残っているプラチナエイゼルがレオンくんの前に立つ。それにレオンくんは反応もせずうなだれたまま。プラチナエイゼルは剣を振り上げそれをレオンくん目掛けて.......



「うわぁあぁぁぁぁ――――――!!!!...っ..」
僕は自分の声に驚き飛び起きた。息は乱れて心臓の音がドクドクとうるさい。体中に嫌な汗をかいたせいか服が体に張り付いている。今見たばかりの夢が鮮明に思い出されて僕はそれを振り払いたくて頭を振った。

「い、今の夢は....」
僕にこんな記憶はない。そのはずなのに何故か絶対に違うとハッキリと否定できない。
そもそも僕はどうして眠っていたのか、悪夢で覚醒したけどまだ起きたばかりでぼんやりしている頭でなんとか思いだそうとする。

(確か僕は虚無からクレイや地球を守るためにレオンくんとファイトしていてそれで.....)
ファイトが進むにつれ僕にまとわりつく虚無、僕はそれに耐えられなくてファイトの途中で倒れて....そしたら誰かが話しかけてきて.....。
そこまで思いだしたところで僕は周囲に違和感を覚え顔を上げた。
そこは真っ白な部屋だった、置いてある家具も窓から差し込む光も何もかもが白かった。まるで汚れることを拒み白以外は全て排除したような部屋、僕が今眠っていたベッドは部屋の中央にありその上にいる僕はこの部屋の中で明らかに際立っている。

どうして自分がこんなところにいるのか、その理由はわからないけれどとにかく部屋ということはここは何処かの建物の中ということになる。僕はベッドから降りて少し先にある扉に駆け寄る。開けることは少しためらったけど、僕は意を決してドアノブを回した。



部屋の外は回廊のようになっていた。いくつもの柱が等間隔で並びまるでテレビや本で見た神殿みたいだと思った。
柱の向こう側の景色はお世辞にも良い景色とは言えなくて紫色の霧が立ちこめ視界がまったくきかない。隙間から僅かに見える空や大地も同じように黒ずんだ色をしている。
(少し僕が見たクレイに似ている気もするけど...)
とりあえず僕はずっと先まで続いている回廊を歩いてみることにした。
歩いている最中も周りをキョロキョロと見てたりするけれど結局意味のない行動だった。けど、ひとつだけわかっているのはここには自分以外の人の気配がまるでしないということ。

これだけ広くて大きな建物の中で歩いていて誰にも合わないのがその証拠だ。本当にここは一体......。

しばらく歩いていたら回廊の途中で曲がり角を見つけた。少し覗いてみたらその先はどうやら外に出られるテラスみたいになっているようだった。ここが何処なのかもっと詳しいことがわかるかもしれないと思って僕は曲がり角を曲がってテラスへと出てみた。


テラスから見えた景色は回廊から見たものよりもずっと広く見渡せた。だけど、結局見えるのはどこまでも広がる濃い霧と立ちこめる黒雲だけだった。
「ホントにここってどこなの.....」
場所の特定もできずに僕が落ち込んでいると突然後ろから声が飛んできた。
「..あれ?アイチ!!起きてたんだね!!!」
「えっ...?」
誰、と続けようと振り返ったら声の主はいきなり僕に飛びかかるように抱きついてきた。あまりにも急でしかも突然起こった状況に一瞬思考が止まってしまう。
だけど、チラリと目線を横に動かしたら僕の顔のすぐ横には見たことのある蒼色の髪が目に入った。サラリとしていてもどこか癖のある髪型も彼が纏う匂いでさえも覚えがある。
そうして僕が頭の中でいろいろと考えている内に僕に抱きついてきた彼が顔をあげたから固まっている僕と目が重なった。重なった瞳は僕と同じ蒼で髪も体も着ている服も何もかもが僕とまったく同じ。
確かこんなことをつい最近にも思ったようなそんなデシャヴを感じた。
「アイチってば全然起きてこないから心配したんだよっ!!!まぁでもアイチは体力ないし今回のことは少なからず君に負担をかけただろうから仕方がないしね」
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