+シキガミショウセツ+ お題編

□赤いふうせん
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「あっ」
するっと手をすり抜けて行く赤いふうせん
声を出した時には、もう手の届かない高い空へと上っていた
「あ〜あ」
とは兄の声
「……ふうせん…」
悔しそうに呟く弟
いつもやんちゃな弟だが、こういう所は可愛いと思う
「また貰ってきてやるから」
そう言ってくしゃり、と弟の髪を撫でた


「あっ」
「どうした?小夜たん」
急にあがった声に、光太郎は振り向く
「いえ……あの……ふうせんが……空に」
恥ずかしそうに言う小夜
その言葉に、手で日除けを作り、ふうせんが飛んでいった空を仰ぐ
光太郎が、小夜に貰ってきた赤いふうせんは、豆粒の様にしか見えないぐらいの高さにあった
「さすがにあれは無理かなぁ…」
「そうですよね……」
残念そうに呟く
「気にすんなって、また俺が貰ってきてやる」
肩を落とした小夜を元気づける様に、光太郎は言う
ふと、過去が光太郎の頭によぎる
(……そういえば、昔似たようなセリフをシン兄がいってたな…)
まだまだ暑さが残る中で光太郎は、そんな事を思い出した
しかし、そんな回想も一時で終わり、思い出した様に腕時計を見る
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