゚・。+☆+。・゚黒魔女゚・。+☆+。・゚
□自称「熱血イケメン教師」ときたら…
2ページ/3ページ
あだ名の通り、相撲さんみたいにでっぷりした男子。
瞼にもたーっぷり肉がついてて、目尻がキュっと上がってるところが、横綱の朝青龍にそっくり。
そんな巨体がメソメソ泣いてると、迫力あるんだけど、ウチは全然気にしなかった。
だって、しょっちゅうだし。
太っていると言われて泣き、足が遅いと言われて泣き、すぐに泣くなと言われてまた泣く。
今日は何があったんだか……。
先「どうした、『食いしん坊バンザイ』、なんか悲しいことでもあるのか?」
あのさー、先生がそういうこと言っていいわけ?
太ってること本人気にしてんだよ。
横綱って強そうなあだ名だって嫌かもしんないのに「食いしん坊バンザイ」って、新しいあだ名を作らんでも……。
思った通り、さっそく一部の男子が手を上げて、騒ぎ出した。
≪食いしん坊バンザーイ!≫
先生は自分のギャグがウケたのが嬉しいのか、なだめるどころかニカニカしてる。
先「さ、話してみろ『食いしん坊バンザイ』」
後ろでまた≪バンザーイ!≫
それをBGMに横綱はぽっぺたをプルプルいわせて、首をふる。
とたんに白石が、スクっと立ち上がった。
白「一部の男子がメチャ当てで、岩田にボール当てたんや」
あ、蔵だ。
じゃなくて、そういえば、確かにプクプクほっぺにボールの跡がくっきりとついてる。
パンパンに張り付いたTシャツの背中にも。
メチャ当てっていうのは、ルールなしのドッジボールみたいな遊び。
コートもなければ、当たった人が外野に出るとか、パスをするとかもない。
兎に角、メチャクチャにボールをぶつけるって意味のない遊び。
思いも寄らないとこからボールが飛んでくるから、顔面ヒット続出。
鼻血なんて当たり前。
特に、横綱の場合は的も大きいし、当たれば泣くしで、いつもやられっぱなしってわけ。
ああいうの見ると、ホント男子って馬鹿だと思う。
白「メチャ当ては危ないから禁止なはずやろ。虐めや虐め。それにルールがないなんて絶頂(エクスタシー)やないやんか。許せへん!」
ルールなくて絶頂じゃないから許せないのかお前は。
蔵の一言に、ボールを当てた奴らが悪足掻きを始めた。
≪虐めてねぇよ!証拠あんのかよ!≫
謙「証拠は岩田の顔や。か・お。ボールの跡も、鼻血が出た跡もあるやん」
そーだそーだ。
いつもはヘタレのくせに、虐めとか許せない性格なんだよねー。
謙也ーこの馬鹿者達を血祭りに上げちゃえ!
先生が、グリっと横綱を見つめた。
先「『食いしん坊バンザイ』そうなのか?」
横綱がコクリと頷く。
≪何だよ、横綱、やってねぇだろっ!≫
男子の一人がすごむように言う。
それを先生がギロリが睨んだ。
やれ!先生!ビシっと怒鳴ってやれ!
先「横綱じゃなくて、『食いしん坊バンザイ』だろ」
はーーーっ?
注意するのそっちなのーーーっ?
てか、今更だけど何だこの小学生みたいなクラス。
あれ?ウチら中学生だよね?
先「そうかー、やられちまったのか『食いしん坊バンザイ』。じゃあ次は頑張れよ」
は?そーいう問題じゃないんじゃないか?
当然、蔵も謙也も黙ってません。
白「悪いんは禁止のメチャ当てやったうえに、岩田を虐めたあいつらやで?」
謙「白石の言うとーりや。何で次があんねんちゅー話や」
けど、先生ったら、にたぁっと笑った。
先「人間って言うのはさ、禁止にされるとやりたくなるんだよ」
白・謙「先生!」
先「だって、流行る遊びって、面白いからだろ?いくら禁止にしても無駄なんだよなぁ。それにだ、『食いしん坊バンザイ』」
先生は、唖然とするウチ達を無視して、横綱を見つめた。
先「悔しい思いを乗り越えてこそ、人は強くなる。つまりだ、若い内は体からも目からも、たくさん汗をかこう。それが青春ってもんだ。な、『食いしん坊バンザイ』!」
うわぁ。全然理屈になってないよ。
これじゃ横綱虐められ損じゃん。
流石に蔵もけんやも唖然としてる。
その隙に先生はコロっと話題を変えちゃった。
先「さあて、今日もHRなんてめんどくさいものはとばして、漢字テストから始めるぞぉ」
≪ええーっ。抜き打ちテストなんて、きたないよ≫
皆がいっせいに文句を言う。
先「ああ、いいなあ。その『ええーっ』っていう声が聞きたくて、教師になったんだ」
テメェは変態か。
とういわけで、問題と解答用紙が配られた。
けどさ、抜き打ちテストなんかされたら、何にもわかんないよね。
*